【第19回アジア太平洋小売業者大会から⑥】イオン代表執行役副社長兼イオンモール社長 吉田昭夫氏 成長市場を捉え、地域社会とも共生へ

2019/10/19 06:29 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から⑥》 イオン代表執行役副社長兼イオンモール社長 吉田昭夫氏 成長市場を捉え、地域社会とも共生へ

 イオンは「持続的に成長し続ける企業グループ」を目指し、アジア事業など成長市場やデジタル技術への投資を拡大すると同時に、地域共生策や環境保護活動などを一段と強めている。吉田昭夫イオン代表執行役副社長兼イオンモール社長は講演で、現状と今後の方針などについて語った。

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■変化に機敏に対応

 消費者ニーズは変化、細分化している。ネットとリアル店を対立軸で捉えていた時代も終わった。変化に機敏に対応し、成長市場をしっかり捉え、ヒト、モノ、カネを集中的に投資しなければならない。

 アジアは成長市場だ。イオンモールでは08年に中国に進出、14年から出店を加速し、6月28日に江蘇省常塾市にオープンした常塾新区で計20モール(施設)となった。中国での累計投資額は3000億円を超えた。

 ベトナムなど他のアジアを含め、ドミナント出店戦略を進めている。行政とパートナーシップを結び、街づくりの一翼を担うことを目指している。出店は5年後の街の姿を想定して決めている。アジアのモールは日本以上のレベルを追求している。デジタル技術の活用もモールを進化させるために重要な要素で、常熟新区はデジタル技術を取り入れた最新型モールだ。海外事業で重要なのはいかに将来を先取りするモデルを提供するか、日本のモノを持って行くだけでなく、いかに先端のモノを提供するかだ。

 「ヘルス&ウェルネス」も成長市場だ。健康寿命をいかに延ばすかが社会課題。イオンとして、課題解決に貢献するため、PB「トップバリュ・グリーンアイ」でオーガニックなどの食品を販売している。グリーンアイの売上高は10年は約400億円で、18年に800億円を超えた。有機栽培する農場も運営している。安全な食のSPA(製造小売業)化は世界のトレンドになる。

■環境保護活動も

 リアル店はエリアの消費者にいかにフィットするか、デジタルはワン・ツー・ワン、パーソナライズ化、データ基盤の活用がこれからの小売業の競争優位を決める。デジタル戦略強化策として、中国・杭州にイオンデジタルマネジメントセンターを作った。デジタル技術のイノベーションの拠点で、中国に作ったのは技術が最も進化しているからだ。ここでの取り組みを各国に活用していく。

 企業のESG(環境・社会・ガバナンス)活動は投資家、消費者ともに、(企業を評価する)重要な判断基準になった。注目すべきは環境への関心の高まり、エシカル消費の広がりだ。温暖化問題に対応するため、植樹活動を中国を含めて続けている。グループとして、「脱CO2(二酸化炭素)ビジョン」を策定し、50年までに店舗から排出するCO2をゼロにすることを目指している。

「デジタル技術の活用もモールを進化させるために重要」と吉田イオン代表執行役副社長兼イオンモール社長

(繊研新聞本紙19年10月1日付)



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