【第19回アジア太平洋小売業者大会から⑤】三越伊勢丹ホールディングス社長 杉江俊彦氏 デジタル活用し「最適なおもてなし」

2019/10/19 06:30 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から⑤》三越伊勢丹ホールディングス社長 杉江俊彦氏 デジタル活用し「最適なおもてなし」

 大会ではEC、実店舗の利点をシームレスにつなぎ、顧客満足度をいかに高めるかが大きなテーマとなった。三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長はデジタル技術を活用してEC、実店舗双方でのサービス向上を目指した「マッチングプラットフォーマー」戦略について、講演した。

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■シームレスにつなぐ

 市場にはモノがあふれている。実店舗だけでなく、ECも同様だ。その中で、私たちは本当にお客様にとって最適なモノを提供できているのか。私たち百貨店は価値も価格も高いモノを売っている。お客様に選ばれるために、デジタル技術を活用して、お客様一人ひとりのご要望に応じたモノ、コト、サービスなどを提供し、お客様とシームレスにつなぎ、最適なおもてなしをするのがマッチングプラットフォーマーだ。

 デジタル技術を活用したサービス向上の具体的な取り組みの一つが靴だ。靴で最適な商品選びをする上での課題はサイズ。実店舗で全て試し履きしてもらうことは不可能だ。そこで、売り場にお客様の足型、サイズが測れる3D計測器を配置した。全ての商品のサイズのデータがあるので、一回測定すれば、どのブランドの、どのサイズの靴がお客様に合うのかが30秒でわかる。店頭で販売員がサイズを測り、商品を倉庫に取りに行くなどすれば、30分から1時間くらいかかる。その場でネットでも注文できるが、当社で販売している商品は高価格なので、実店舗で買っていただいている方が多いようだ。

■人、物をマッチング

 自社スマートフォンアプリでは「ロイヤルカスタマープログラム」を実施、重要なサービスと位置付けている。実店舗の最大の強みは人によるおもてなしと接客。ロイヤルカスタマーのお客様はアプリで自分のお気に入りの販売員を選ぶことができ、選ばれた販売員はお客様が来店後、買い物に同行し、案内する。価値と価格が高い商品を売る上で最適だ。デジタル化で得たお客様の購買データを活用することで、こういうマッチングができる。

 秋から、デジタル技術と店舗をつなげた新しい事業として、お客様と店のスタイリストがチャットで会話し、そこで得たお客様の好みや要望などに応じた商品を届ける「ドローブ」を始めた。お客様は本当に気に入ったモノだけ買うことができる。この事業はデジタル技術を使いながら、システムではなく、人がお客様に接客しているのがポイントだ。

 今、販売員とお客様の会話をAI(人工知能)に学ばせている。何年か後にはお客様との簡単な会話はチャットなどを通じてAIでできるのではないか。今後、AIの導入を強化する。デジタル技術を取り込んだ「フューチャーデパートメントストア」を目指す。

「フューチャーデパートメントストア」を目指す杉江三越伊勢丹ホールディングス社長

(繊研新聞本紙19年9月30日付)



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