【第19回アジア太平洋小売業者大会から④】イトーヨーカ堂社長 三枝富博氏 企業理念の構築と共有が不可欠

2019/10/15 06:26 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から④》イトーヨーカ堂社長 三枝富博氏 企業理念の構築と共有が不可欠

 イトーヨーカ堂は97年に成都に中国1号店を出店、中国で現在、10店を運営する。三枝富博社長は現地法人の社長として、中国での成長戦略を指揮してきた。大会ではこれまでの中国での経験も踏まえ、小売業に必要な企業理念と哲学を語った。

【関連記事】【第19回アジア太平洋小売業者大会から③】小濱裕正日本チェーンストア協会会長 地域社会との共生が不可欠へ

■現地での経営力

 成都に20年間赴任した。常に中国人民の生活が豊かになるような店作りを心がけ、中国人の従業員と同じ目線で企業マネジメントを続けてきた。(海外事業運営は)いかに現地での経営力を高めていくのかが一番大事だ。そのため、現地の人たちを幹部に登用して、自信を与えるようにしてきた。結果、中国人の仲間たち、社員は成長した。

 経営の軸は「お客様第一主義」。小売業の全ての基本だ。お客様がワクワクし、満足する店、売り場作り、サービスを中国でも追求してきた。それを実行するのは人だ。

 イトーヨーカ堂は来年に創業100周年となる。60年近く前はまだ小さい存在だったが、今では日本で売上高が業界2番手にまで成長した。ただし、今後も長く企業として存続し、成長するためにはおごりなどがあってはならない。世の中で求められている価値やお客様が欲しい商品などに機敏に対応し、社員自らも変化しなければならない。

 ネットワークがこれからの企業、社会の方向性を決める。当社店舗では1日に約6400万人のお客様に買い物していただいている。このネットワークを生かさなければならない。そのために、進化するテクノロジーを活用することは確かに必要だ。ただし、大切なのはその土台となる企業理念と哲学をどう築き上げ、作り変えていくのか。それを従業員や地域の人たちと共有するかだ。この点を一番強調したい。

■事業は人なり

 従来は店舗はモノの販売をすれば良かった。しかし、「空間」としてどういう価値を提供できるのかという段階に入っている。地域の人たちにとって、かけがえのない場、「毎日行きたくなる場」にならなければならない。それを実現する上でも、経営理念・哲学を従業員が共有し、お客様からたくさんの「ありがとう」という言葉をもらえるようにならなければならない。一人ひとりがリーダーとして、自立的、主体的に仕事に取り組むことが従業員の成長にもなり、お客様の満足度向上につながる。

 事業は人なり。どんなテクノロジーがあってもそれは道具であり、(事業にとって)部分的な要素に過ぎない。現場で起きている問題、お客様の不平不満を敏感に感じ取り、それをチームで共有して一つ一つ改善していくことがサービス業である小売業の企業価値向上につながる。小さなことを徹底することがサービス業の経営だ。

「小さなことを徹底することがサービス業の経営である」と語る三枝社長

(繊研新聞本紙19年9月27日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事