【第19回アジア太平洋小売業者大会から③】小濱裕正日本チェーンストア協会会長 地域社会との共生が不可欠へ

2019/10/14 06:28 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から③》小濱裕正日本チェーンストア協会会長 地域社会との共生が不可欠へ

 日本は人口減少と少子高齢化時代に入り、小売業には新たなビジネスモデルへの転換が求められている。小濱裕正日本チェーンストア協会会長(カスミ取締役会長)は大会の基調講演で、「共生社会における貢献型スモールビジネスのチェーン化」を提起した。

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■地域社会の活性化

 日本の人口は加速度的に減少し、高齢化も進んでいる。「買い物難民」と言われる人々も発生し、小さな町村では小売業の撤退も多い。日本の人口は既に1億3000万人を割り、30年には1億人を切る。食品だけで2000億円規模のマーケットが縮小する。当社のような食品スーパー(SM)はモノを売るだけでは生き残れない。疲弊する地域社会を投資をしていかに活性化するかがこれからのSMのテーマだ。重慶のようなこれから拡大するマーケットにはピンとこないかもしれないが、いつか直面する課題だ。

 当社は「共生社会の実現」を経営理念に据えている。地域社会への投資はその柱だ。

 最近、大学の中に店を出した。その大学は海外からの留学生も多く、食事にはコンビニエンスストアばかり利用しているという。「学生たちに食事を作る重要性を体感する場を作ってほしい」という大学からの要望があり、出店した。若い人たちにそうした場を提供するのも小売業の役割だ。

 当社では地域社会との共生を実現するため、お年寄りが体操する機会を作るなど日常生活全般にかかわるイベントも積極的に実施している。お年寄り同士が話し合いをしたり、相談する場も作っている。

 SMのレギュラー業態では店の中で体験型料理教室やフードエデュケーションなども行政などから依頼されて、実施している。共生社会は国家的なプロジェクトだ。小売業として、自分たちができることをやっていきたい。

■利益より「貢献」を

 マスの時代は日本では終わった。規模を拡大するのが会社の経営ではない。スモールビジネスをネットワーク化し、デジタル技術を活用して効率的に運営していくことが今後の重点だ。ファミリーマートと提携し、コンビニとSMが融合した新しい小型のSMを作る。

 企業の社会的責任を具体的にどう果たしていくのかが小売業にとっても大切だ。SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが各国で広がっている。当社も様々な社会課題の解決に向けて、対応を強化している。ただし、これらは1社の力だけではできない。地域のコンビニやドラッグストアなどと協力して、課題の解決に取り組みたい。

 100年先も企業として生き残るためには社会の中でどういう機能を果たし、社会から信用を得るのかが重要だ。利益よりも「貢献」を優先する経営を続けていきたい。

小売業にとって「社会的責任をどう果たすかが大切だ」と語る小濱会長

(繊研新聞本紙19年9月25日付)



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