ゾゾグループで新規事業開発などを行うゾゾネクスト、東京大学大学院情報学環筧康明研究室、西陣織の細尾は、伝統工芸とテクノロジーを融合した新しい織物のインスタレーションを都内で行った。生体データを計測するセンシングテキスタイルなどとは一線を画し、温度で色が変化したり、重なった生地を光が透過することで色が表れたりするといった〝美〟を追求し、新しい体験を提供するテキスタイルの開発に挑む。
(中村恵生)
美を最上位概念に置く
20年から3者で「アンビエント・ウィービング」というプロジェクトを立ち上げ、継続的に新しい織物の開発に取り組んでいる。テクノロジーを活用したスマートテキスタイルの開発は、大手メーカー中心に導電繊維によるバイタルセンシングが一時盛り上がったが、市場が広がらず、現在は下火。これに対し同プロジェクトは、「当初から美を最上位概念に置いてきた。ゾゾはファッション企業。テクノロジーを使いつつ、見た目に美しく、新たなユーザー体験につながる物を考えてきた」(ゾゾネクスト・田島康太郎MATRIX本部長)。
細尾は伝統工芸の枠を超えた織物を追求し、「グッチ」など海外ブランドに採用されていることでも知られる。細尾真孝社長は、「西陣織は世界一複雑な構造が織れ、細い・太い・平たいといった色々な糸を織り込める。これによって世界最先端のスマートテキスタイルができるのではと考えた」と話す。