アダストリア「ハレ」 質と独自性の追求で成果 東コレ参加とコロナ禍が転機

2024/01/01 06:28 更新


 アダストリアの「ハレ」が好調だ。高付加価値化への路線変更が奏功し、20周年の今期の決算では過去最高の売上高と利益を見込む。「品質と独自性の追求を通じ、ブランドイメージを高めたい」。ここから始まった挑戦には、値上げも含まれる。

 20~30代が主な対象で、メンズの支持が強いが、最近ではレディスも急伸中。現在、国内はウェブを含めて33店で販売する。

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1万円以上値上げ

 値上げの転機は二つある。一つは17年の東京コレクションの参加。〝東京発のモード〟を物作りで表現し世に問いたいという思いと、海外進出への野心からだった。コレクションラインとして、高価格帯の商品を発売。アウターで従来より1万円以上値上げした商品は想像以上に売れた。独自性で勝負できる手応えをつかむと、専属のデザイナーをチームに加え、他にはない価値を商品に落とし込む作業が始まった。もう一つは、コロナ禍だ。店舗休業を余儀なくされた20年、客数の減少を商品単価を上げて補おうと考えた。顧客が満足する質とクリエイティブの提供は大前提だ。22年は客単価も19年比で1.2倍になった。

17年に東京コレクションで発表したファーストコレクション。着用している和のディテールをモードに昇華した〝サムエコート〟が人気
不用になったレザーアイテムのサンプルを解体、再構築したライダースブルゾン。1点物で即完売した。税抜き12万円

信用の醸成が必要

 こだわった物作りの追求が、実を結んだ。ECで買い物を楽しむ客が増えたが、凝った商品は画面上に映え、認知の拡大や新規客の獲得にも貢献。エントリー商品から高単価まで価格の幅が広まり、予算に合わせた購入の選択肢が増えた。

 値上げしても客に受け入れられるためには、信用の醸成が欠かせない。具体的な戦術は、約2年前から強化する正価販売だ。デザイナーの感性とマーケティング分析を基にした企画やMD、公式ウェブストア「ドットエスティ」の先行予約を活用した需要予測で、無駄を生まない発注を徹底した。今では90%以上を正価で売るという。

 ブランドミッションは、「私(=客、スタッフ、サプライヤー)をアップデートしてくれる」。物作りや接客で客と真摯(しんし)に向き合ってきたから、価格が上がっても客は離れない。「お客さんにはハレの服を着ることで、スタッフにはハレで働くことで自分に自信を持ってほしい」。営業部長の小長谷健一さんはこう話す。値上げの成功体験は、ブランドをさらに強くする。

20年の成長を見てきた小長谷さん。「誇りを持って働きたい」と、ブランドのミッションを体現する接客や物作りを促してきた

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