キーパーソン集結―国産ジーンズの未来を語る

2015/03/21 19:58 更新


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【メード・イン・ジャパンを考える ジーンズ座談会】

国産の魅力を消費者の視点で伝える努力を 

 

 

後継者がいないー本澤

司会: まず、それぞれの問題意識を出してほしい

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■ドクターデニムホンザワ代表 本澤裕治氏
 大手ジーンズメーカーでキャリアを積んだ後、独立。現在、さまざまな企業・ブランドのジーンズのコンサルティング、プロデュースに携わる。

本澤: 我々の後の世代で後継者がいない。それが一番の問題。以前は企業が育ててくれるということもあったが、今はそれもなくなっている。自分たちの責任で後継者を育成していかないといけない。

竹下: ジーンズやデニムだけでなく、奈良のソックスや新潟のニットなどいろんなメード・イン・ジャパンがある。どこかでそれを見られる環境があればいい。例えば、JFWインターナショナル・ファッション・フェアには服飾専門学校のブースがあってもいいはず。学生が来れば学びの場になる。

稲垣: タイにデニム生産会社を設立したが、これは「日本をさらに強くする」という意味を持つ。企業としてもカイハラが成長しないと人材採用しようにも人が集まってこない。広島の工場だけでは限界がある。拡大のためには海外を視野に入れざるをえない。日本に軸足を置いても、当社が生産しているデニムのかなりの量が海外にいっている。縫製や洗い加工などどこまで日本で対応できるのか。カイハラは生地段階までのメーカー。しかしその良さが(二次製品の形で)消費者に伝わらないと意味がない。

■カイハラ営業部部長代行   稲垣博章氏  日本のデニムのトップメーカー、カイハラ。これまで国内で生産していたが、タイに現地法人を設立、16年1月からの稼働を目指す。
■カイハラ営業部部長代行   稲垣博章氏
 日本のデニムのトップメーカー、カイハラ。これまで国内で生産していたが、タイに現地法人を設立、16年1月からの稼働を目指す。

細川: 日本製であることの価値の創出ができていない。昔、商品を見てこれいいなと思ってタグを見ると、中国製とか台湾製と書いてあってショックを受けた。一方で米国製やフランス製はいいものと思っていた。今の高校生は生まれたときの産着から学校の制服まで、中国製を着て育ってきた。だから日本製の何がいいのか知らないし、日本製ということに興味もない。メード・イン・ジャパンが購買の理由になっていない。作り手の側もただ日本製といっているだけで、何が優れているのかという説明も何もない。日本のアニメやすしなど、海外の人が興味を持つ、クールだとかカワイイという要素を見出せていないし、伝えきれていない。

知人に玉鋼のカンナで家具を作る職人がいる。角を取るのにサンドペーパーを使わずカンナだけを使う。平面をいくつも組み合わせて丸みを付け、触ると面を感じる。売り場でその作業のデモンストレーションをすると欧米人は感動するのに、日本人は立ち止まらない。日本の伝統産業が古臭いものになっている。

伝統工芸の産地でよく、若いデザイナーやクリエーターを迎えて、陶器やアクセサリーを従来とは違うものに変え、新しい切り口で価値を伝えようとしている。しかしアパレルではそれが難しい。価値を伝えていくのでも角度を変えていく必要がある。

■リー・ジャパン取締役    細川秀和氏  米ブランド「リー」を手掛けるリー・ジャパンのディレクター。さまざまなブランドとの協業やCSR(企業の社会的貢献)活動などにも取り組む。
■リー・ジャパン取締役    細川秀和氏
 米ブランド「リー」を手掛けるリー・ジャパンのディレクター。さまざまなブランドとの協業やCSR(企業の社会的貢献)活動などにも取り組む。

例えば、ジーンズの洗い加工一つとっても、日本では立体で捉えるのに対し、欧州や中国では平面で捉える。日本製はヒゲがわきを横断していると説明すると消費者はすごいと言うが、メーカーはあたり前だと思っている。メーカーは伝える必要がないと思っていることでも、消費者が知らないことがある。ジーンズはアパレルの中でもそういう要素が多いアイテムだ。日本製を着ていることが、かっこいい、カワイイにならないといけない。

エドウイングループには国内13工場あり、働いている人の平均年齢も30代後半、40代と若い。エドウインの工場で働くことが地元の人にとっても魅力となっていて、親子2代で働いている人もいる。そうしたことも発信していきたい。

竹下: 工場もパウダールーム(女性用化粧室)やトイレ、食堂などからきれいにしていかないと人が集まらない。ジーンズ工場でもそうした動きが出てきた。以前は中国などからの外国人労働者がいたが、今は来ない。こうしたことをしっかりやっていかないと若い人は集まらない。

本澤: 約20年前、ちょうどエドウインの工場の建て替えの時期にエドウインにいたが、建て替えでペンションみたいにきれいになった。これなら働きたくなると思った。

【メード・イン・ジャパンを考える ジーンズ座談会】

国産の魅力を消費者の視点で伝える努力を 

小売り志向がもの作り軽視にー小谷

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■アベイル社長        小谷理実氏
 縫製工場などアパレルの生産管理システムで有名なアベイル。アパレル業界に特化したパッケージソフトを開発している。

司会: 様々な工場を見ている立場からはどうか?

小谷: 当社は縫製工場の生産管理システムなどアパレル業界に特化したシステムを開発・販売している。当社のパッケージソフトを使っている企業が国内に650社以上、海外を含めると750社以上ある。その国内工場の中には以前は従業員が200人いたのが、今は30人になったところもある。国内のユーザーで最大の工場は600人弱の従業員を抱えるがそういうところは珍しい。みんな30人以下、50人以下になっていて、国内で大量に物を作りたくても作れない状況になっている。

そうした中で、自分でブランドを立ち上げたり、小売店を出して、企画から小売りまでトータルでやろうという工場も出てきた。しかし、ブランドを根付かせ、続けていくには莫大なお金がかかる。しかし工場には資金がない。結果的に自ら死期を早めることにもなりかねない。

■インターナカツ副社長    竹下通彦氏  郊外路面の大型カジュアル店「ジーンズファクトリー」などを展開するインターナカツでバイヤーなどの経歴を持つ。
■インターナカツ副社長    竹下通彦氏
 郊外路面の大型カジュアル店「ジーンズファクトリー」などを展開するインターナカツでバイヤーなどの経歴を持つ。

一方で大手アパレルは(自らの管理下で生産するのではなく、生産を委託した商社やOEM会社から買い上げる)製品買いが80%以上を占めるようになった。メード・イン・ジャパンを守ろうとするなら、5%の構成比でも国内生産を増やし、きちんとブランディングしてやっていく必要がある。世界で販売する力のある大手企業が、日本のものづくりを残そうとやってくれなければ無理だと思う。

昔なら工場がサンプルを出して、工数を見積もってとやっていく中で、買い手の側も工数の価値を認めてくれた。今はまず小売価格が決まっていて、原価はその20%とかになる。それだと工数を減らすか素材のグレードを下げるしかなくなる。工数をかければいいものができるということをわかってくれるならいいが、そうではない。

 

司会: メード・イン・ジャパンを訴求するとき、何を訴えればいいのか

小谷: 中国に小売店を出して販売する日本企業が増えているが、中国で作ったものを現地で売っても、価格でローカルのブランドに勝てない。ローカルのものの方が品質がいいこともある。日本独自のうんちくや匠などを訴えられるものづくり、店作りをしていかないと売れない。

本澤: ジーンズで、ボタンやステッチでも日本製に変えるとこんなに変わるんですよと説明すると、まず女性の社員がびっくりする。自分が話さないと伝わらないので、店長会議などに出て売る人たちに話した。

小谷: 今、中国から何百万人も日本に観光に来ている。彼らは中国で日本ブランドの店を見ていて、中国より日本で買った方が安いことを知っている。海外でうまく情報発信できれば、日本でもっと売れる。

本澤: ジーンズの起源は米国だから、米国のジーンズが「THE」(本物)だと思っている人がいる。日本のジーンズの方がよっぽど「THE」。ジーンズを知らない人にはそういうことが伝わっていない。

 

【メード・イン・ジャパンを考える ジーンズ座談会】

国産の魅力を消費者の視点で伝える努力を 

中味よりも伝え方が重要ー細川

司会: もっと、もの作りに目を向ける必要がある。

細川: 昔と違って大手アパレルのクリエーターが工場に足を運ばなくなっている。生産は品質管理の部署や商社が管理している。世界で活躍する日本人の有名デザイナーはみんな現場が大好きで工場に入り浸っている。現場で生まれたもの、日本独特の和という価値観はやはり欧米のものとは違う。線の表現や黒の色合いでもニュアンスが微妙に違う。それが海外で評価されている。それはやはり現場の力。大手アパレルには現場でものを作るという感覚がなくなってきている。

アパレルは今、商社にもの作りを丸投げしている。商社は効率化を図る。異なる商品で同じ生地を使うなどするから、商品が同質化する。百貨店の売り場の商品のブランドを付け替えればみな同じにみえる。それが消費者にばれてきている。「ユニクロ」の商品と何が違うのか、なぜこんなに高いのかという話になる。

ある大手SPA(製造小売業)グループは「現場に戻ろう」という号令をかけていたが、服飾専門学校や大学など教育の場でもそれを進めてほしい。企業もワークショップやスタディツアーで進めていく。今はアパレルの売り上げが減少し、円安という変革期。ものづくりの魅力や現場のことを伝えていく好機だ。

竹下: あるセレクトショップが経営しているパン屋がはやっている。なぜはやるのか。ふつうのパン屋はパンをビニールの袋に入れるのに、その店は紙袋に入れている。フルーツでもそういう店がある。それが安心感や高級感につながって、ブランド化していく。みんなすごい努力をしている。今、アパレルのメーカーや小売りにはそういう努力が足りないのではないか。

本澤: 自分もそれをすごく感じる。NBと呼ばれたジーンズメーカーは売り上げを大幅に減らした。自分たちはカジュアルSPAとは違うぞといわないといけない。今の学生はそのカジュアルSPAでいいと思っている。メーカーがそういう世の中にしてしまった。

竹下 もちろん大手カジュアルSPAがジーンズをやり出したといった影響はあるだろう。しかしどういう手を打ったのかという問題。手を打たなかったからこうなった。ある振り屋(複数の協力工場をコーディネートして生産を受託する企業)は自社で工場を作った。今の時代にすごい投資をした。すごいことだと思うが、そういう考え方をしないと生き残れない。

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【メード・イン・ジャパンを考える ジーンズ座談会】

国産の魅力を消費者の視点で伝える努力を 

ビンテージにこだわるなー竹下

司会: 海外に向けては何を訴えていくべきか。

細川: 日本人がメード・イン・ジャパンというとき、伝統や匠など本質にこだわり過ぎている。ペットボトルに入ったお茶を例に考えると、それを買う人はお茶の本質を買っているわけではない。飲み方がポイントになっている。大事なのは人と物をどうつなぐか、つまり両者の間にあるものだ。

例えば、米国で抹茶を売り込みたいとする。抹茶を店で出しただけでは誰も飲まない。抹茶のラテや抹茶のエスプレッソを作ったとしても、それをどう飲ませるかがミソ。抹茶を紙コップに入れただけではだめ。人目を引くような容器に入れて、それを見た人が自分も飲んでみようかと思わせるものでないといけない。中味よりも見た目や印象が大事だ。

ファッションを伝えるのにも本質に頼り過ぎている。みんな中味しかうたっていない。どう伝えるかが大事。海外に向けて売っていくのに、「和」過ぎるものはだめ。海外のジーンズブランドが作る日本製ジーンズは日本ぽくない。映画の「キル・ビル」は日本を間違って捉えているがそれを修正しようとしたらダメ。ジャパン・トラディショナルではなく、ジャパン・モダンでないと海外で受け入れられない。モダナイズした日本をクリエーティブしないと売れない。日本では温故知新に行き過ぎてる人が多い。

各分野からジーンズのキーパーソンが集結し、ジーンズの未来について大いに語った
各分野からジーンズのキーパーソンが集結し、ジーンズの未来について大いに語った

竹下: 欧州ブランドのジーンズをみるとシーズンごとに商品が変わる。このシーズンのデニムはこれです、加工はこれですということが明確だ。ところが日本は1、2年単位でやっている。だから若い子のニーズに合わない。日本はクリエーティブが弱い。

本澤: 悲しいかな、日本のジーンズが一番遅れたフィットになっている。

竹下: 売り場でも販売員がジーンズのことをわかっていない。販売員にジーンズの知識を高めてもらおうという動きがあるが、ビンテージを売ろうということではないはず。やはり、女性の消費者に興味を持ってもらうことが必要。ビンテージでは女性が店に来ない。ガチガチにやってはいけない。

本澤: ジーンズ馬鹿、ジーンズ野郎が集まってジーンズを作ってきたからだめになったんだと思う。自分は服が好きで、たまたまジーンズをやった。だから、いつもジーンズに対して客観的な目でみられる。今日はジャージーをはきたいという気分のときもある。その気持ちが分からない人がジーンズを作っている。

竹下: ジーンズ単体のことばかり考えたのが問題。ジーンズ専門店を作るとジーンズだけが以上に高くて、他のアイテムは安く、バランスが悪い。うちの店で94年か95年に「モンクレール」を置いたときに、「ジーンズにモンクレールなんてありえない」とムチャクチャ言われた。売るためには変えていかないといけない。NBもジーンズに頼りすぎたから衰退した。ジーンズ専門店もシャツやダウンのことを知らないし、興味もない。

昔、バイヤーは100%感性と知識だった。今は感性が20%で、80%がデータ(数字)。せめて感性の比率が40%になれば変わる。データはもちろん必要だが、そこからプラスアルファを考えないといけない。

逆に大手カジュアルSPAは2年先をみて商品を作っている。彼らのほうがよほど感性に頼っている。

小谷: アパレルメーカーが自ら小売りをやる方向にシフトし、経営者の頭の中も小売りになっている。するともの作りが軽視される。経営者も2代目、3代目に代わり、必ずしも服好きでない人が経営している。システムの面からみても、QR(短納期)ばかりが言われる。もともと物作りとは時間がかかるもの。それができなくなっている。そういう産業構造になったことが背景にある。

 産地を越えた協業をー稲垣

司会: これから何が必要になると考えるか

稲垣: 産地との交流はこれから大事になる。企業と企業ではできるところはすでにやっている。我々だと北陸とのコラボなどやらないといけない。自分も北陸を回り、工場のオーナーの話を聞いてきた。彼らはデニムのことを知らない、自分たちは北陸のことを知らない。お互いがコラボレーションして、開発して物を作れる可能性があると感じている。しかしなかなか、きっかけがない。

竹下: スポーツブランドとデニムとか、機能素材とデニムなどコラボは以前もあった。しかし継続していない。

小谷: 毎年、どこの工場が倒産したとか閉鎖したとかいう話が出る。だったら、当社がお金を出して展示会の場を設け、当社のソフトウエアを使っている工場やアパレル、小売りを集めて、ユーザー同士でお金を落としあったらどうかと考えたことがある。誰かが旗振りをしないといけない。シャツ工場はシャツしか縫えないし、パンツの工場はパンツしか縫えない。どうやったらお客を広げられるか。そしたら、当社のお客のアパレルと工場をくっつけてみたいなことを考えざるを得なくなる。

 
《出席者(発言順)》

  • ドクターデニムホンザワ代表 本澤裕治氏 大手ジーンズメーカーでキャリアを積んだ後、独立。現在、さまざまな企業・ブランドのジーンズのコンサルティング、プロデュースに携わる。
  • インターナカツ副社長 竹下通彦氏 郊外路面の大型カジュアル店「ジーンズファクトリー」などを展開するインターナカツでバイヤーなどの経歴を持つ。
  • カイハラ営業部部長代行 稲垣博章氏 日本のデニムのトップメーカー、カイハラ。これまで国内で生産していたが、タイに現地法人を設立、16年1月からの稼働を目指す。
  • リー・ジャパン取締役 細川秀和氏 米ブランド「リー」を手掛けるリー・ジャパンのディレクター。さまざまなブランドとの協業やCSR(企業の社会的貢献)活動などにも取り組む。
  • アベイル社長 小谷理実氏 縫製工場などアパレルの生産管理システムで有名なアベイル。アパレル業界に特化したパッケージソフトを開発している。

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