【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】18~19年秋冬ミラノ・コレクションは、ショー会場の作りや演出にこだわるブランドが目立った。〝インスタ映え〟を狙った仕掛けでもあるが、それ以上にブランドそれぞれのストーリーを丁寧に表現しようする流れでもある。服そのものだけでなく、プレゼンテーションの意味合いが強まっている。
(写真=大原広和)
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木箱に段ボール、タイヤに土嚢(どのう)。マルニのショー会場には生活まわりにあるさまざまな材料で観客用のシートが作られている。そこに腰をおろしてショーの開始を待つ。猫の鳴き声とともにモデルたちが現れた。
パテントのコートはステッチの糸が揺れ、ドレスは身頃の左右で違う生地を切り替える。レザーコートは折り畳んでステッチをかけたようなディテール。ざっくりと入れたステッチがウエストを絞り、腰から張りのある官能的なフォルムを作る。
メランジカラーのフェルトコートは素朴な気分を運んでくる。テーマは「エレメンタリー」(基本)。クリエイティブディレクター就任から3シーズン目を迎えたフランチェスコ・リッソは、前任のコンスエロ・カスティリオーニの作ったマルニのスタイルと未来の姿を融合して、新しい基本を作り始めたといえる。
フューチャリスティックなテクノロジーを感じさせる素材とアンフィニッシュドのディテール、構築的な作りと非構築的な作りという相反するものを融合していく手法で、その基本となるフェミニティーを探している。猫の顔をプリントしたコートと長いフェザーのピアスが、アイコンのような役割を果たす。