【連載】激変のヤング市場で闘うー3

2015/04/17 11:38 更新


《連載 アイデンティティーは何だ?~ヤング市場で闘う~③》

「ファンを作るために」 まず、原点まで立ち返る

 「今の子はブランドに興味がない。ネットでも、ブランド名ではなく商品の色や形で検索する子が多い」。あるヤングレディス店の店長が、そう話す。商品力を磨くのは当然として、どうしたら「ここで買いたい」ブランドでいられるか。そのためにはまず、自分たちのありたい姿を自身で問うことが必要だ。

◇誰にを明確に

 「社内ではいつも、『誰に、を明確にしろ』と言っている」と、ジュン取締役執行役員の渡辺明利。同社の『ロペピクニック』は、とがりたくもださくもなりたくない、この値段でこの素材のクオリティー、そんな絶妙なバランスで幅広い世代の女性に支持されている。

 対象が多いからといって、薄く広くでは誰の心にも届かない。「お客様がきちんと見えていること、ファン化していくことが大切。販促も年代別にセグメントしている」。コアは25~35歳だが、ブランドの鮮度を保つにはヤングの取り込みも重点として、昨秋冬からトレンド商品のカテゴリーを加え、「LINE」を使った販促も実施、20代前半の客を増やしている。「彼女たちにも長年着てもらえるブランドでありたい」

 好調が続いていたロペピクニックだが、昨年11月、3年半ぶりに前年実績を落とした。増税後の消費を読みきれなかったためだ。業績が悪くなると、ブランドがブレてしまうもの。そこで今年から、社内向けにブランドの六カ条を作った。自分たちが大事にすべきものは何か。企画担当から店頭スタッフまでがいつでも立ち返って確認できるような柱を立てることで、ブランドの魅力を守っていく。

◇半歩先の憧れを

 「この数年は価格競争の波に引きずられていた。でも、我々がどうありたいのか? と聞かれたら洋服屋として格好良くありたい。その価値観を、少しずつ社内で共有してきた」と話すのは、ウェアーズ社長の上杉典正。同社の「ダブルクローゼット」は、店頭スタッフとともにブランドとしてのポジショニングや見え方を討議し、商品や売り場作りに着実に反映。この結果、上期(14年8月~15年1月)の既存店売上高は、前年同期比10%増となった。

洋服屋としての格好良さを追求し、売り場の見せ方も変えた(「ダブルクローゼット」)
洋服屋としての格好良さを追求し、売り場の見せ方も変えた(「ダブルクローゼット」)

 客層の低年齢化が課題だったが、「コアの25歳をひきつけるには、少し上の世代に支持される商品を」との方針で、14年春から商品企画を刷新。デザインやディテールをシンプルにし、素材の質を上げた。半歩先の憧れを提案できるよう、売り場も見直した。プライスPOP(店頭広告)を極力なくし、「値引きしないことが顧客にとっては最高のサービス」として期中の値引きも中止。商品を盛りすぎていた什器もすっきりさせた。

 特に売り場は、店長たちの率直な意見をもとに改善した。自分たちが見て格好良い形に修正した結果、客から見ても良いものになったという。「我々くらいの規模のブランドの強みは、価値観を共有しやすいこと。じっくりと浸透させてブランドのポジションを明確にしたい」(敬称略)



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