【若手記者が行く】縫製工場で服ができるまでを体験!

2018/06/11 06:30 更新


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 一着の服ができるまで、どのような工程があるのでしょう。入社2年目の記者が新入社員とともに、東京・墨田に本社を置くカットソー工場、丸和繊維工業で常務の伊藤哲朗さんに話を聞き、実際にTシャツを作る体験をさせていただきました!

(関麻生衣)

縁の下の力持ち

 縫製の世界は広い。各工程で多くの人が関わっている。原料を生産する人がいて、それを糸にする紡績工場など原糸メーカーがある。糸をニッターや染色工場に卸す糸屋、付属品のボタンやファスナーなどの専業メーカー。これらの部品を使って服をデザインするデザイナー、それをもとにパターンを引くパタンナー。これらを経て、一着の服を完成させるのが縫製工場だ。

 縫製工場は、専門の品種で区分され、カットソー工場と布帛工場に大別される。違いは扱う生地の特質。それによってミシンと針も異なり、布帛は本縫いミシン、カットソーはロックミシンを使う。

縫製工業と丸和繊維工業について学ぶ。「縫製業は幅広い!」 
丸和繊維工業常務の伊藤哲朗さん 

 驚いたのは、パタンナーの位置づけの高さ。カットソー工場では専属のパタンナーが多い。カットソーに使う編み地は布帛と違って伸縮性があり、縫い方でテンション(伸び具合)が変わるため、現場で微調整しながら作るには、パタンナーの存在が欠かせないからだ。

 布帛工場には専属のパタンナーがいない場合が多く、アパレルメーカーやブランド側に属すのが一般的。その際には、アパレルやブランドのパタンナーが〝パターン〟の指図書を工場に送り、それを縫い子さんが読み解いて仕立てていく。

ジャージーの伸縮性とその着心地を実物で確認

動体裁断を着る

 丸和繊維工業が販売している動体裁断を活用したドレスシャツ「インダスタイル・トーキョー」を実際に着用し、普段のシャツとの違いを体感させてもらった。

動体裁断について資料を見ながら説明してもらった。中澤先生の日常での疑問が発明のきっかけと知る 

 シャツを着て「腕を上げると、生地が突っ張ってしまう」体験は誰にもあるはず。しかし、このシャツには、それがない。手を上げたり下げたりしても、生地が引っ張られる感覚が全くないことに驚いた。縫製は肩の分量が多め。前身頃と後ろ身頃のつなぎ目に、さらに、くの字にしたパターンを入れているのがポイントだ。

「インダスタイル・トーキョー」を試着。手を挙げても生地が突っ張りません! 
動体裁断を活用した服は、宇宙飛行士が宇宙滞在に着用する船内服にも

Tシャツを縫ってみよう!

 丸和繊維工業のサンプル工場ではロックミシンでTシャツ作りを体験させてもらえる。実際にミシンを使うと、縫製しながらその端が同時に裁断されている。カットソー(カット・アンド・ソーン)のゆえんを目で確認できた。

 縫う時のポイントは「生地を手前に引っ張ること」。伸縮性があるため、こうして微調整しながらサイズごとの大きさを統一する。体験してみると、これが想像以上に難しい。引っ張る絶妙な加減と、ペダルで縫う速度を調整するのは容易でなく、Tシャツ1枚を作るのにも相当な技量が必要なことを痛感した。

 服が完成したら、畳み板を使ってアイロンをかけ、検針機にかけて異物の有無を調べる。こうして、安心安全の状態で消費者の手元に届けられていく。

バンドナイフで生地を裁断

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まずは縫い子さんに手本を見せてもらう

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切れ端から縫い目までの幅は5ミリ以内にするのが決まり

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質疑応答。「ジャケットやスーツをきちんと縫えるまでに3年」という

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実際に縫うと想像以上に難しい

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縫い上がった服はアイロンに掛けられる

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じゃーん!何とかTシャツが完成しました

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 私たちが普段何気なく着ている服。今回の取材で気付かされたのは、縫製業と一口に言っても多くの工程があり、そこで働くプロフェッショナルがいること。需要の変化とともに日本製の商品は年々減り、後継者問題など課題もあるが、受け継いできた技術と品質を守るため、汗水を流す人々がいる。日本の物作りの価値は、そこに携わる人々の思いなのかもしれない。

ご協力いただいた丸和繊維工業さん、説明して下さった伊藤さんありがとうございました!



丸和繊維工業

 56年に深澤和章元会長がメリヤス肌着事業を始め、58年に丸和繊維工業を設立。大手アパレルメーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)を中心に、百貨店向けメンズブランドなどのカットソーを作る。本社は東京・墨田で、青森と福島に工場がある。現在の社長は深澤隆夫氏。


〈用語解説〉

布帛

 各種の織物を意味する。対義語は編み地(ニット)で、洋服に使う布地(テキスタイル、textile)は、織物と編み地に大別される。古くは「布」は麻織物、「帛」は絹織物を指した。英語のcloth(クロス)、fabric(ファブリック)はテキスタイルとほぼ同義語。

カットソー

 cut-sew。丸編み地(ジャージー(jersey)を裁断(cut)し、縫製(sewn)した衣服を指すカット・アンド・ソーンの略。対義語はフルファッショニング(full-fashioning)で、体の曲線に沿って編み目を増減しながら作るニット製品を指す。カット・アンド・ソーンが定着したのは60年代からとされる。製品としてはTシャツやポロシャツをはじめとして、最近ではジャケットやスカートなどまで幅広い。

パターン

 pattern。服の平面の設計図、パーツの型紙のこと。繊維用語、服飾用語としては生地の柄や模様、服地などの見本、衣服の型や原型、特に型紙(ファンデーションパターン、ベーシックパターン)などを指す。パターンをおこしてデザインを服にする人をパタンナー(patter-ner)という。

動体裁断

 デザイナーの中澤愈氏が発明した衣料設計システム。人体解剖をし、人間の皮膚の伸展方向、厚薄、硬軟などを解析して考案した。動体裁断した衣服の特徴は、引きつれる感覚のない着心地で、腕を上げ下げしても裾の位置がほとんど動かない。電車のつり革や車の運転などで実感しやすい。

ファクトリーブランド

 工場が消費者に向けて直接に販売するブランドのこと。80年代後半、欧米で高級ブランドの生産を任されていた工場が自前のブランドを売るようになったことが始まり。90年代にメンズ市場でイタリアのクラシックなスーツ、シャツ、革製品などがブームになり、工場のブランド化が加速した。丸和繊維工業でも11年に「インダスタイル・トーキョー」を立ち上げ、動体裁断によるジャージーのドレスシャツを販売している。

■縫製業界の実態

 日本市場で流通する衣料品のうち、日本製は3%未満で、年々減っている。増えているのが、中国やインドネシアなどアジア製品。日本の技術と品質を維持するため、ファクトリーブランドの生産・販売などに活路を求める例は多い。オペレーターの平均年齢は61歳。国内の縫製工場の常用雇用者数の規模では、4人までと小規模なところが半数以上を占め、後継者問題も深刻になっている。



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