「ヨシオクボ」は25日、夜の水族館で1時間限定の展示会を開くとともにフロアショー形式で24年春夏コレクションを披露した。
【関連記事】「ヨシオクボ」23年秋冬 服作り見直し、自らの口で説明
会場となったのは、マクセルアクアパーク品川。巨大な水槽のトンネルの中を新作をまとったモデルたちが歩いてくる。ぴったりと頭をおさえたスイムキャップ、スニーカーはディップに漬けたようなコーティングのデザイン。おぼろげな水槽の光に照らされて、目を凝らしながら新作を見る。そんな見え方も、久保嘉男が意図したもの。「まやかしのようなものでじっくりと見たくなる。何者か分からないから、目を凝らして見たくなる」。そんな演出のコレクション。
クリエイションの背景にあったのは「混濁」。涼しさや爽やかさを洋服に落とし込むことを意識した。分厚いガラスの水槽がゆがむ視界、結露ができた窓の向こうに見えるぼんやりとしたもの。それをチュールやカッティング、デザインで、どう服に表現するかを考えた。生地が重なって微妙な変化を作り、境界があいまいになる素材感が特徴の一つ。水槽の中のようにぼんやりと浮かび上がる柄のプリントアイテムも出している。
ポリエステルの生地をレーザーカットで葉っぱの形にカットして、葉っぱが垂れさがりその向こうの生地が見えるデザイン、カットジャカードの生地のぼんやりとした動き。そんなテクニックを様々なアイテムにのせた。
今回のイベントはあくまでも展示会だという久保。かつてのようなショーの規模とは考えていなかったようだ。ただ、フロアショー形式で見せるとなると、もう少しデザインの幅が欲しくなる。かつての空気をはらんだ造形服から、今回の水やゆがみを取り入れたデザインへと展開していくあたりは、久保らしい発想が貫かれているが、もう少しその展開先を見てみたかった。
(小笠原拓郎)