「ヨシオクボ」23年秋冬 服作り見直し、自らの口で説明

2023/03/24 14:00 更新


企画の意図を自らの口で説明

 15年続けたランウェーショーをやめた「ヨシオクボ」は、23年秋冬物から服作りの考えを改め、展示会では久保嘉男デザイナー自らが商品説明をするやり方に変えた。情報発信のあり方も見直し、動画SNSを通じた情報伝播(でんぱ)にも力を入れるという。24日には第1弾として、〝新生〟ヨシオクボの動画をユーチューブで公開する。話を聞いた。

(永松浩介)

 2年前にある取引先から「最近の服、全然凝ってないね」と言われた。他にはないディテールや機能が強みだったのに、ショーをベースにしていたから派手な色や演出を優先していたのかも知れない。ショーだと照明もあるし来場者との距離もあるから。今回からは意味のないデザインは入れていない。ディテールに理由があれば洋服の賞味期限は長くなり、二次流通でも売れる。これが自分が考える服の持続可能性。

 元々は展示会でもよく話していたけど、ショーを始めてからは「洋服が語ればいい」と思っていたから、ほとんど自分では話さなかった。ショーをやめたので今回からは自分の口で説明することにした。商品を間近に見てもらいながら1回30~40分、20回近くしゃべった。接客にも使えるからなのか、バイヤーにはすごく響いたと思う。

意味のないディテールを排したという

 ショーをやめて時間を捻出できたので、これからは動画SNSに力を入れる。良しあしは別にして、うちの若いスタッフもファッションショーなんて見ないから。不定期だが、ユーチューブの公式アカウントとウェブサイトで公開する。環境音楽のような心地良い雰囲気のもので、物作りの現場の美しさを表現できればいいと思っている。お手軽な服作りとは一線を画すプロの仕事を見せたい。インスタグラムの投稿内容も変えようと思っている。

 最近はサウナハットやドリンクホルダーなどファッション以外のものも作っている。学生服や作業服もやりたい。今まで会社にこもり過ぎていたので、どんどん外の世界に出ていく。ずっと新しいことをやってきたつもりだったけど、ファッション業界という井の中の蛙(かわず)だった。デザインで洋服以外の産業にも資することができればいい。しかもすべて動画コンテンツにもなるし。

 ショーをやめて血迷っているかと思われるかも知れないが、そうではない。ブラックスワンのような地殻変動がこの業界にも起こっていると思うから先手を打っているだけ。ファッションサイクルも変わるだろうし、今までと同じやり方では売れない。

 23年秋冬物のテーマは「セルフディフェンス」。ここ数年、和の要素が強かったが「和をたどると中国に行き着く」。幼い頃好きだったブルース・リーやジャッキー・チェンをイメージしたカンフージャケットやパンツを作り、縫い子だった母親がしてくれたパッチワークを思い出しシャツやパンツに用いた。色も白や黒、ベージュ、カーキなどに抑えた。

パッチワークの長袖シャツ4万7000円
スウェットトップ3万3000円、カンフーパンツ3万6000円
パッチワークのロングコート12万円


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