縫製工場のダブルエックスデベロップメント(岐阜市、戸谷太一社長)のファクトリーブランドがファンを広げている。インスタグラムの動画配信機能IGTVを活用し「お裁縫男子」を配信、生産者の〝人となり〟を率直に伝えてブランド顧客を増やしている。
IGTVを活用し始めたのは昨年9月。ファクトリーブランド戦略の見直しがきっかけだ。
〝中途半端〟を打破へ
ブランドのスタートは19年1月。岡山のデニムを使い、丁寧な縫製、手洗いによるワンウォッシュ加工などこだわったデニム製品「ノーコンプライジーンズ」や、Tシャツなどカットソートップが中心の「シュアーマニュファクチャリング」などを作ってきた。しかし、「ブランド力、価格ともにどっちつかずで中途半端」で、売り上げも伸び悩んだ。どこで勝負するか考えた際、「『俺たちが作った』しかないだろうというところに行きついた」(戸谷社長)という。インスタグラムのアカウントは開設していたため、IGTVを使って動画配信を始めた。
週に1回以上配信
動画撮影は工場2階の小売りスペースを使う。登場するのは戸谷社長と吉川健大郎工場長の2人。お裁縫男子と題しているが、話す内容は様々。ブランドの新作の紹介もあれば、綿花から糸ができるまでの解説、〝ネットで服買う?〟のような問い掛けシリーズまで幅広い。もちろん、ミシンの部位の解説や糸の通り方、針の走らせ方、天じく編みの仕組みなど縫製工場らしい玄人向けもある。
週に最低1回以上とルールを設け、既に60回以上配信した。1回当たりの配信時間は45分前後。最初は慣れておらず、15分程度だったが、今では戸谷社長と吉川工場長の自然な掛け合いがすっかり人気になった。
当初は800人ほどだったフォロワーも、1700人を超えた。服選びやスタイリングについて相談してくるフォロワーもいる。それに伴い、自社ECの売り上げは大幅に増加した。10万円を販売するのがやっとだったのが、コンスタントに100万円、多い時で200万円を超えるようになった。
同社は03年、戸谷社長が創業した。OEM(相手先ブランドによる生産)中心の時期もあったが、ファクトリーブランド戦略にかじを切った。
(森田雄也)