最近では、機能衣料で内から温かくもできますが、秋が深まってくると、やはりウールが恋しくなります。秋冬の代表素材のひとつ、ウールの基礎知識を2回に渡ってお送りします。
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世界には約10億頭の羊がいると言われています。
産毛量は洗い上げベース(※1)で150万トン強、綿やポリエステルなど全繊維に占めるシエア(数量)はわずか3%程度ですが、スーツやコート、セーターなどのアウター素材として大きな位置を占めてきました。
羊は大きくメリノ種と、その他の種類の羊、例えば英国・ロムニー原産のロムニー種、英国・シェットランド島原産のシェットランド種などに大別され、メリノ種(※2)以外は原産地名で呼ばれることが多いようです。それぞれ、今ではもちろん、原産地以外でも飼育されています。
メリノ種は世界各地に分布する最もポピュラーな羊であり、衣料用の70%を占めています。毛の細さによりスーパーファインメリノや、ファインメリノと分類されます。
毛(フリース)を糸に紡ぐ方法は、大きく梳毛(ぼうもう)紡績と紡毛(そもう)紡績に分かれますが(※3)、羊毛は梳毛紡績、カシミアやアンゴラなどの獣毛は紡毛紡績での生産が中心になっています。
紡毛の代表的な織物は、フラノやツイード、メルトン、梳毛は、サージ、ギャバディン、ポーラなどがあります。
ちなみにラムウールは、生後半年ぐらいの子羊の柔らかい毛のことで、羊の種類を指すものではありません。
(㊦に続く)
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※1洗い上げベース 刈り取った毛から油やゴミを取り除いた重さ。ちなみにこの油は化粧品に使われることもあります
※2メリノ 交配による改良が重ねられ1300年頃に現在のスペインで誕生したと言われています
※3紡毛糸と梳毛糸 梳毛糸は、長い毛足のもの(羊の肩や背の毛)をよく梳(す)いて、繊維を直線状に引き伸ばすと同時に、平行状態に並べて撚りをかけて糸にしたもの。表面がなめらかで光沢があり、スーツ地などに使われます。一方の紡毛糸は、毛足の短い繊維(羊の腹部など)を使い、梳毛のようにドラフトしたり縮れを直したりしないで甘く撚った糸。毛羽が多いため、ふっくらとして保温性が高いのが特徴です。日本の産地では、梳毛は尾州(愛知)、紡毛は泉州(大阪)が知られています