欲しいのは自分服 大人女性の新市場㊤

2016/12/29 06:47 更新


迷っている人が置き去りに


 婦人服市場が不振に陥る中で、特にミセスと言われてきたゾーンが軒並み苦戦している。一方、独自の世界を持つ個店やブランドは、百貨店や大手セレクトショップでは満足できない、感度の高い大人層を捉えている。50代以上が人口の半分を占める今、このギャップを埋めるために何が必要なのかを聞いた。

 

東神開発 営業企画部MDグループグループ長 清瀨和美さん

東神開発 営業企画部MDグループグループ長 清瀨和美さん

 
〝役割服〟は卒業

 これまでのファッション業界は、人口の多い団塊ジュニアを追っていました。でも、彼女たちは消費に意欲的ではないんですね。一方で最後のバブル世代が50代に入ったことから、そちらにギアチェンジしている段階ではないでしょうか。玉川高島屋SCの客層は、30代、40代、50代が拮抗(きっこう)していて、60代以上も2割を占めています。もう年齢で考えるのはやめていますね。子育て世代が学校行事や近所の目を気にして選ぶ服を〝役割服〟と言うならば、子育てを終えて役割服が必要なくなり、自分がもともと好きだったものにチャレンジされる人が増えています。うちは役割服には強いので、そうでなく、もっと楽しさやテイストの幅広さを提案しようと検証してきました。「エンフォルド」や「ザ・シークレットクロゼット」は30代から70代まで、幅広い層をつかんでいます。

提案が足りない

 体形や顔映りが変化し、年齢に服が合わなくなってくるなかで、自分の気持ちに合う服を探している方が増えています。意欲的な人は自ら探していますが、何を買っていいのか分からないけれど、小奇麗にしたいという層が置き去りにされている。例えば、生活感度が高く、経済的にも余裕があって人との交流も盛んだけれど、友達と服について情報交換するほどではない人たちです。「プレインピープル」が一部のそういう人たちを捉えていると思いますが、もっと提案が必要です。働く女性に関しても、パンプスにストッキングが前提のスタイルが多く、男性目線だなと感じます。今はよほどの大企業や堅い仕事でなければ、管理職でもワンピースで十分。パターンやサイジングの技術力があり、年齢を重ねた方が手掛けるブランドがもっと増えて欲しいと思います。そういう意味で、「エブール」は久しぶりにきれいな服を見たと思いましたね。

 19年に玉川高島屋SCは50周年を迎えます。これを機に、施設のあり方を見直したい。洋服はちゃんとやれば売れると思っています。売れるか売れないかは、すてきな洋服かどうかだけ。今はすてきじゃない服が多いので、売れていないように見えるだけだと思っています。これからは服そのものの魅力に加え、この会社だから応援したいという気持ちでお金を払う人が増える気がしています。商業施設としても、支持されるものを目指さなければと考えています。

(繊研 2016/11/22 日付 19595 号 1 面)



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