和歌山ニット産地、円安追い風に海外

2015/04/16 06:50 更新


 丸編み産地の和歌山で、独自素材の開発や自販に注力してきたニッター、染工場の注目度が高まっている。円安で国内産地の存在感が増すなか、独自技術や企画力の強化、人材育成、海外素材展への参加など、この間の取り組みが成果を上げつつある。安定した経営と成長を目指して、次なる一手を模索する動きも出てきた。

 独自素材や技術を生かした輸出が好調に推移している。丸和ニットは、編み機開発から手掛けた「バランサーキュラー」で、前年から輸出が倍増。特にウール素材が好評で「7台ある機械は全てフル稼働状態」が続く。13年に仏素材展プルミエール・ヴィジョンに初出展した森下メリヤス工場では、輸出比率が25%を超えた。今後も継続的に海外展に出展するなど海外営業に注力して、将来的には30%まで伸ばしたい考えだ。

 糸の染色加工場、吉田染工は15年度、海外市場への打ち出しを強める。子会社でニット生地加工の貴志川工業と連携した糸から生地までの一貫加工を訴求するほか、伊素材展ミラノウニカへの参加や、生地メーカーとデザイナーをつなぐ米企業間取引サイト「ソース・フォー・スタイル」出店を視野に入れる。「製品で見せるなど提案方法も工夫」(吉田篤生社長)して、産地内の染色加工工程を担う同社の技術力を見せる。

 継続的な成長を目指し、人材育成や新素材の開発にも取組む。森下メリヤス工場は14年、語学やファッションに明るい若手を採用した。アパレルのデザイナーや海外バイヤーと直接交渉する人材を育て、自販体制を拡充するのが狙いだ。吉田染工は、海外展に若手を派遣をして経験を積ませることで企画力を強化するほか、社内でチームを組んで市場調査や商品開発を推進する。丸和ニットはポストバランサーキュラーを目指して、既存の丸編み機を使った開発に取組む。

 同産地では、県が欧州ブランドや国内アパレルのバイヤーを招致した産地商談会を開くなど、行政による輸出支援も活発だ。「研修も兼ねたアパレルのデザイナーやマーケティング担当者の工場見学が増えてきた」など、国内アパレルの物作りへの意識変化を指摘する声も上がる。産地ならではのスピード感のある高品質な物作りを生かして、国内外での成長を目指す。



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