映画「ハドソン川の奇跡」の放映を機に、この飛行機事故のてん末を、ドキュメンタリー番組で見た。映画では事故機の機長である主人公が、米国の事故調査組織にいわれのない過失を疑われるが、SNSでは話を盛り上げるための誇張と言われていたからだ。
ドキュメンタリーでは、機長の判断ミスはあらゆる可能性の一つとして序盤に言及しただけで、検証を経てすぐ否定した。飛行機事故は多く人命に関わるので、調査員は再発防止を最優先に考え、機材や体制、マニュアルといった、属人的でない部分の改善を企業に求める。たとえ人的ミスであっても、個人の責任を問うことはまれだという。
トカゲのしっぽ切りという言葉があるが、最近の日本では問題が起きれば頭でもかまわずとにかく切って世間の批判をかわす印象が強い。問題を根本的に解決するのでなく、その場をしのぐことが最優先になっていないだろうか。
ドキュメンタリーでは、世間が乗員乗客を無事に避難させた機長を英雄視するあまり、事故調査に反感を抱き、実際に事故調査に当たった調査員は、原因究明が難しくなることを恐れていた。感情を優先しては、再び問題が起きかねない。あらゆる立場の人が実情に目を向け、問題解決に向け冷静に対処する姿勢が求められる。
(稜)