今秋冬商戦は以前にも増して実需購入が強まっているようだ。今年は少し先の寒くなったときに着られるものが売れなくなっている。今着ると少し暑く感じられるものは売れないとの指摘だ。ウールコートがなかなか売れないのはその反映だと見る向きが強い。先買い商品はかなり厳選されるということだろう。今年は各社とも厚手のコートを店頭の前面に早めにディスプレーするところは少なかった。今売るべき実需品の売り上げロスになる可能性があるからだ。
来春夏商戦も同様の傾向が続くだろう。特に難しいのはスプリングコートではないか。実売期が短く、着用期間も短いからだ。気温の上昇が激しいと需要がさらにしぼむ恐れもある。今春夏展は各社とも単品を中心に着回しが良く、汎用性が高く、長く着られる企画にシフトしている。できるだけデザインを主張しすぎず、広範に受け入れられる企画だ。その一方で、差別化し、特徴を出すことが難しい課題だ。衣服に対する意識は総じてファッション性から機能性に移っているようだ。
コロナ禍の影響や生活支出先のバランスの変化もあるだろう。この傾向がどこまで続くのかはマーケットを見る上でも気になる。
(武)