この間、消費者とのコミュニケーションのあり方を考えさせられる取材が続いた。一つは、年率50%増で成長するゴルフウェアブランド。インスタグラムの公式アカウントにブランドのディレクターが積極的に登場し、ライブ配信で遠隔接客を試みたり、フォロワーと頻繁にやり取りをしたりして、客との距離を縮めている。一般的なスポーツブランドの場合、スタッフは黒衣に徹するが、あえて作り手を露出させ、客がブランドに親近感を持てるようにしている。
もう一つは新興のキャンプ用品ブランド。デザイナー自身がユーチューブに出て、製品の開発過程をアップしている。発売前の製品については通常、秘密裏にするものだが、「あれこれと迷ったり、失敗したりしながら開発していく様子をあえて見せることで、フォロワー自身が製作に関わっている気分になってもらえる」という。事実、「公開開発」したテントは予想を上回るオーダーが入った。
いずれも非効率な販促ではあるが、ビッグヒットが生まれない時代には、黒衣が前に出るこうした手法がマッチしているのかもしれない。
(潤)