《視点》ピカソの絵

2019/11/27 06:23 更新


 「キュビスム」という言葉を初めて聞いたのは、中学の美術の授業だった。代表的なのがパブロ・ピカソだ。彼のあの奇妙な絵が、さまざまな角度から人や物をとらえ、1枚のなかに再構成されたものだと知ったとき、自分が見ているものや信じていた常識がぐらりと揺れたような気がした。

 先日、美術館でピカソの作品をまとめて鑑賞する機会があった。大人になった今も、どこまで理解できているか分からないが、じっと眺めていると想像力がかき立てられ、自分自身の日常ともつながってくるのが面白い。たった二つの目で正面からだけ見る世界よりもずっと雄弁で、本質的にリアルに思えるのだ。

 既存のものを分解して再構成するというプロセスは、ファッションのデザインや新しいビジネスを考える上でも重要だろう。アートから我々が学ぶことは多い。

 もう一つ。91歳で亡くなったピカソは非常に多作でさまざまな作風の作品を残しているが、自画像などでも素晴らしい画力を発揮している。優れたアートは、革新を裏打ちする基本の価値も教えてくれる。

(石)



この記事に関連する記事