《視点》DNAの新解釈

2019/04/25 06:23 更新


 繊研新聞社は毎年4月に、新入社員向けのセミナーを行っており、今年も大勢が参加してくださった。記者が担当しているのは、ファッショントレンドの仕組みや最新情報。ファッションと社会との関係性を理解してもらえるように心がけてきた。

 今回のキーワードはサステイナブルや「#Me Too」運動、LGBTQ(性的少数者)など。これらがトレンドやブランドの姿勢に大きく影響することを伝えた。そのなかでブランド刷新を行ったばかりの「クレージュ」の話に、若者が目付きを変えた。

 60年代、クレージュは新素材のビニールで、未来的なスタイルを提案して一世を風靡(ふうび)した。それから約60年を経て、世の中は持続可能な社会を目指すようになり、生分解しないビニールは地球に悪影響を与える存在になった。

 それを踏まえて、新生クレージュは「ビニール製品の生産は残反がなくなるまで」と決めた。ブランドを象徴するビニールを手放すというのは大きな決断だが、それ以上に社会の流れを取り入れて未来に向かうというDNAを重視した。その解釈が若者の心にも刺さったというわけだ。長年仕事をしていると、思考が固まりがちだが、意義のある新発想は多くの心に響く。そんなことを再認識した。

(規)



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