《視点》採用苦戦が意味するもの

2017/08/31 04:00 更新


写真はイメージです

 アパレル業界の低迷を反映してか、多くの企業が新卒採用で苦戦している。内定を出して確約を得たと思っても辞退されるケースが増えている。産地の機業場や染色工場では一部に若い人が頑張りだしているという話があるものの、全体としては後につないでいく技術者不足は悩みの一つだ。

 ある大手コンバーターのトップは業界の低迷だけが原因ではないという。IT(情報技術)が進化し一見スマートに見える生産や流通の現場も、一歩その中に入れば、「依然として徒弟制度のような状態が蔓延(まんえん)している。そうした実態が増幅されて若い人に伝わり、人材確保が難しくなっている面も大きい」。

 確かに、グローバル展開を叫びながら、一方ではコスト優先の下請け構造に振り回されて設備投資もままならず、人を育成する時間をロスと見ることも少なくない。クリエイションという、ファッション業界の生命線とも言える言葉も薄っぺらく見えてくる。

 先のトップは言う。「若い人から見れば魅力のない業界に映るだろう。小手先ではない、根底からの変革に業界挙げて取り組むべきだ」と。(英)



この記事に関連する記事