海外で本格的に商売をして行く為に①(坪内隆夫)

2014/07/21 13:29 更新


PITTI UOMOから始まったメンズのセールスキャンペーンですが、MILANO、PARISと続き、BERLINのBREAD & BUTTERも終わったので 、ヨーロッパの重要なメンズ市場での販売は終わりにかかっています。

昨年まではLONDONの展示会JACKET REQUIREDにも出展し、8月にドイツを中心にお店をまわっていましたが、夏は日本に帰ります。

今年のイタリアの夏は、普段ではもうかなり暑いPITTI UOMOの時期もその後もそれほど暑くならず、ほとんど扇風機もいらないような気温だったので、あの蒸し暑い日本に帰るのが今から怖いです...。 

2012年1月のPITTI UOMOから始めたJAY PROJECT、今回で6シーズン目です。

始めたときから4シーズン目までは結構お客さんも増え、うまい調子に行っていましたが、現在ちょっとした壁にぶつかっています。ある程度お客さんも増えてきて、今後これ以上オーダーを増やして行くためには海外にあったやり方をして行かないと、「少しだけ海外と商売をしている」程度に終わってしまいそうに思います。

ヨーロッパにもアメリカにも日本のメンズブランドを愛する人は結構いて、それを取り扱っているお店もいくつかあります。実際日本のメンズカジュアルは歴史がありますもんね。日本人が作ったカジュアルは世界的にも評判が高いです。

はじめのうちは新しく海外に出始めたブランドでもそういった日本びいきのお店に入って行く事が出来るので、そこそこオーダーは伸びてきます。しかし、その後それらのお店に一通り入った所からが本当の勝負だと思います。

日本びいきのお店とちゃんと商売しつつ、それ以外のお店にもちゃんと商品を入れて行かないと本格的な海外進出は出来ないと思います。ただ、今後そういったお店を増やして行くには問題点を少しずつ解決して行かないといけません。

海外のバイヤーに取って日本ブランドと商売する上でのデメリットは…

■商品価格が高い

日本ではそれほど値段の高い商品でなくてもヨーロッパに入る為には、以下の要因で値段が高くなってきます。

*エージェントのコミッション(外部のエージェントが販売代行をするのが一般的な海外の市場では、このコミッションはもうはじめから別で考えています)

*商品の送料

*関税、衣類関係では12%ほど

*消費税(日本でも最近上がったばかりですが、イタリアの消費税は22%、スウェーデンになると25%にもなります)

これらの諸経費等を入れるとかなり高い値段になってしまいます。

■支払いが前払い

日本のブランドは海外のお店と商売する場合、ほとんど前払いで商売をしています。

こちらでヨーロッパのブランドがあるエージェントに販売委託をした場合には一般的にその国の支払い条件にあわせさせられるので、支払いは90日後になったりもします。

しかし支払いで問題があった場合が怖いので、一般的に日本のブランドは30%のデポジットをオーダーコンフォメーションを送った時点で請求し(SSではデリバリーから5ヶ月前)、残りの70%はデリバリー準備ができた時点で支払ってもらいます。

お店としてはかなり悪条件です。ブランドとしてのリスクはこれでほとんどなくなりますが、お店としてははたしてちゃんとデリバリーしてくれるかどうか分からず、量産商品もどういった物が上がって来るかは商品が入ってきてからでないと分からないので、これはお店に取っては大きなリスクとなります。

それでも日本のブランドに前払いしてくれるお店があるのは、これまで日本人が積み重ねてきた信用性があるからではないでしょうか?

一般的に日本のブランドを置くようなお店は海外でもトップクラスのお店が多く、そういったお店で売れる時期は、先ず立ち上がりの時に洋服好きの人が購入し、その後はバーゲンのときに多く売れる様です。

日本でそのデリバリーに対応してくれるブランドは少ないですが、実際そういったお店では秋冬で7月中のデリバリー、春夏物は12月のデリバリーを望んでいます。

■日本との商売には手間がかかりすぎる

日本からの輸入手続き等をするのをめんどくさがるお店が多いです。上記の様にデポジットとデリバリー前に2度日本に送金してもらうことになるので、お店に取っては8000円程度の銀行手数料を支払う事になります。

■サイズの問題  

日本のブランドの多くは、海外対応のサイズ展開になっていないブランドが多いので、着てみると袖が短かったり、海外の人の体型にマッチしていない事が少なくないです。

また、日本でのサイズ表示は、半サイズもしくは1サイズほど海外の物よりも小さいのですが、例えば日本でのLサイズはこちらでのMとLサイズのあいだ、もしくはMサイズ。

私の担当しているANTONIO MARRASのメンズは海外のサイズ展開でアジア対応のXSからXXXLまでそろえています。XXXLって日本で言うとXXXXL位のサイズです。

■コミニケーションの問題

コミュニケーションと言っても、ここ最近はかなり英語でも商売が出来る日本人は多いですが、言葉がちゃんとしゃべれてもビジネスでの習慣の違い等から仕事がスムーズに行かないケースが多々あります。

ヨーロッパは国が違っても長い間多の国と仕事をしてきているので、その中での一般的ルールというのがありますが、これまで日本では他の国とビジネスをして来た経験が少ないので、日本では正しくても海外では通用しない事もかなりあります。

以上の事等から、ある程度お店も開拓でき、良い関係を作って行けていても、これ以上売り上げを伸ばすには次のステップに入らないと行けないと思っています。



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坪内隆夫 つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。2004年2月から2007年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、2012年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する。



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