トランプ政権とアンダーアーマーの釈明広告

2017/02/20 06:15 更新


「渡航禁止令」に反対、移民の持つ多様性こそが強み

 【サンフランシスコ=立野啓子通信員】大統領選の結果をマスコミが見誤ったこともあり、多くのマスコミと対立する米トランプ政権は、アパレル小売業界にも「アンチ」が多い。この中でトランプ氏を支持する数少ない経営者のひとり、アンダーアーマーのケビン・プランクCEO(最高経営責任者)のテレビでの発言に、ブランドの顔といえるアスリートたちがいっせいに反発。これに対しプランク氏は、地元紙ボルチィモア・サンに、「会社は移民と平等の権利を支え『入国禁止令』には反対する」という声明文を広告で発表した。

 プランク氏は、ビジネス番組CNBCのインタビュー中で、「大統領の意欲と大胆な決断を尊敬する。このようなビジネスのプロが大統領であることは国にとって真に利点になる」と発言した。折しも7カ国からの入国禁止令が発表され、ニューヨークやロサンゼルスの空港でデモが盛んな時期。アンダーアーマーの看板スター、ステファン・カーリーやドウェイン・ジョンソン、ミスティ・コープランドがインスタグラムで「発言は遺憾」というメッセージを発し、同社の商品をボイコットするグループも出てきた。

 これを受けて株価は急落。第4四半期(16年10~12月)は、売り上げの伸び率がこれまでの20%台から12%と減速しているだけに「イメージダウン」は大きな痛手だ。プランク氏は「ボルティモアの皆さま」に宛てた釈明文でまず「先の発言は私の意志を正確に伝えたものでは無くアンダーアーマーと自分の立場を明らかにしたい」と釈明。

 「ここは私たちのホームタウンであり、会社は98年度に2人の従業員から始まったが今は1万4000人を抱える。これまで投資、雇用、全てのことに対し平等な権利を施行してきた」とした上で「移民はグローバルな企業にとって多様性とイノベーションを強くする源流であり、渡航禁止令には断固反対し、今後もチームメートやその家族、地域に危害を加える新たな動きに対して闘う」と表明した。

 さらに、宗教、性別、国籍などによる異なる視点を超えた多様性こそが「我々の強み」であり、今後も米国生産で雇用を創出するため、地元で教育、テクノロジー、インフラ、輸送に投資し、「私たちはブランドを選んでくれる人たち、特に多様で包括的な米国の明るい未来を担う若い人たちに対し、責任がある」と結んだ。

 一方、競合相手のナイキは、マーク・パーカーCEOが「大統領令」に反対するメールを従業員に送り、2月はブラックヒストリー(黒人歴史月間)としてスポーツドキュメンタリーを流し、公正と尊敬の「イコーリティ(平等)」キャンペーンを展開している。



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