東レは回収衣料を新しい繊維に再生する〝繊維to繊維〟に本腰を入れる。回収システムや分離プロセスなど実現への課題は残るものの、前期から稼働した同社のナイロン6ケミカルリサイクル技術を活用し、スポーツ・アウトドアアパレルに協働を呼びかける。
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7月4日から東京で開いているスポーツ展示会の入り口近くにブースを設け、「回収型ケミカルリサイクルナイロン〝衣服to衣服〟をめざして」のメッセージを添えて大々的にアピールしている。
ケミカルリサイクルは製品を化学的に分解して原料に戻す方法で、バージンに近い品質が得られる。同社はナイロン6ケミカルリサイクルで知見があり、使用済みの警察制服レインウェアで実績がある。従来はバージンと混合する重合設備で行っていたが、これを分けてリサイクル100%糸が作れるよう名古屋事業場の設備改修を実施、前期から稼働した。
これを活用し、すでに漁網由来のリサイクル糸の販売を始めるなどポストコンシューマー(使用済み)製品を原料にしたリサイクルも始めた。
「この間、サステイナブル(持続可能な)素材を全面に出しているが、最終的には回収循環の取り組みが求められる。回収衣料のリサイクルへ踏み出し、取引先との話し合いも始まっている」(大塚潤スポーツ・衣料資材事業部長)。
ただし実現にはクリアすべき課題もある。生地はナイロン100%でも、縫い糸、副資材に異素材が使われている場合も多く、特にスポーツ・アウトドアではポリウレタンのラミネートやコーティングといったリサイクルを阻害する素材との組み合わせも多い。回収システムと合わせ、これらの分類、解体方法を取り組み先と検討し、リサイクルに適したモノマテリアルの衣服設計も推進する。同時に複合品の分離技術なども研究していく。