東レが即効性に優れる抗ウイルス剤を開発 引き寄せて酸化分解

2022/05/31 06:28 更新


酸化セリウム粒子と特定分子の被膜で高い機能を発揮

 東レは、即効性に優れる抗ウイルス剤を開発した。酸化セリウム粒子を特定分子で被覆し、ウイルスを吸着・分解する。金属イオンや光触媒、有機系といった従来品とは全く異なるメカニズムで、新型コロナウイルスで行った試験では15秒で99.9%以上が不活化する即効性が確認できた。

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 セリウムは地殻中に多く存在するレアアースの一種で、その酸化物である酸化セリウムは半導体ウェハーなどの研磨剤、化粧品の日焼け止め、排ガス浄化触媒など幅広い用途で使用されている。

 今回、開発した抗ウイルス粒子は、酸化セリウムの粒子の外側を特定の分子で被覆したもの。金属系の抗菌・抗ウイルス剤として使われる銅や銀などの場合は金属イオンが溶け出すことでラジカルが発生して不活化させるが、これは酸化セリウム自体の酸化力によって分解される。被覆した特定分子との組み合わせが機能発現のポイントで、吸着力を発揮し、酸化セリウムの酸化力を向上させる。

 日本繊維製品品質技術センターで実施した新型コロナウイルス(デルタ株)に対する試験では、15秒後に99.9%以上、5分後に99.99%以上が不活化し、従来の金属系との比較で100倍の速度で効果があった。ノンエンベロープタイプのネコカリシウイルスでも1時間後99.99%の効果を確認し、今後、同タイプへの即効性も検証していく。

 危険有毒性、耐変色性、耐腐食性にも優れ、繊維、樹脂、フィルムへのコーティングや練り込み、塗料添加剤といった幅広い製品を狙う。マスク、ガウン、カーテン、カーシート、衣料品など繊維関連や、樹脂・フィルムといった自社素材に採用するほか、建築内装や食品包装用インクなどに分散液を販売する計画。2~3年以内に販売開始し、市販の無機系と同等のコストを目指す。

 同社が抗ウイルス剤自体を開発・販売するのは初めて。ナノ・バイオテクノロジーの融合領域を研究する同社先端融合研究所で遺伝子などの安定化の研究を行う中で、逆に分解機能を持つ物質が見つかり、メカニズムを解明して抗ウイルス用途へ広げた。酸化力を生かして抗菌や防汚といった機能も探る。



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