森ビルが東京・虎ノ門の大型複合施設「虎ノ門ヒルズ・ビジネスタワー」(地下3階~地上36階)に6月11日に開業した商業施設がコロナ禍の中で順調なスタートを切った。目玉として開設した飲食ゾーン「虎ノ門横丁」の売り上げが8月上旬までで「全体で予算を超える」(塚本雅則商業施設事業部「虎ノ門横丁」担当)ペース。物販を含む他ゾーンにも集客効果が波及しつつある。施設内を含むオフィスワーカーの来館は在宅勤務の広がりの影響で予想よりも少ないが、近隣の居住者のほか、「これまで虎ノ門エリアにあまり来なかった」層を取り込み、客層が広がっている。
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虎ノ門ヒルズ・ビジネスタワーは14年6月に開業した同森タワーの隣接地に今年1月に完工した。商業施設は地下1階~地上3階、地上4階の一部で、59店が入る。施設面積は約7600平方メートル。
「国際ビジネス都市・虎ノ門のプレーヤーに向けた衣食住のサポート」が商業施設全体のMDコンセプトだが、虎ノ門横丁は施設全体とコンセプトを少し変え、「エリアの起爆剤となる新しい食のランドマーク」を目指した。3階に開設し、各店を開放的な作りにし、横丁のように並べた。全て新業態で、焼鳥店で初めて『ミシュランガイド』の星を獲得したバードランドや老舗和食店「鳥茂」の分店、たこ焼き店チェーン「築地銀だこ」の新コンセプト店「築地金だこ」など26店が入る。
横丁は平日の昼にワーカーの需要をつかんでいるほか、「土曜・日曜に虎ノ門エリアにあまり来なかった家族連れやカップルなどが数多く来店している」という。バードランドやスペイン料理店「プランチャ・スリオラ」が「ミシュラン掲載店の料理が手軽に楽しめる」点が支持され、特に好調だ。
6月6日に東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅が開業、銀座線・虎ノ門駅を含めて地下通路がつながった効果で、「地下鉄を利用してわざわざ来る客も多い」という。横丁のシャワー効果で、1階に集積した和菓子、スイーツなど手土産需要に対応した店舗も順調だ。
2階の物販フロアでは、オンワードパーソナルスタイルのオーダーメイドスーツ店「カシヤマ」が近隣居住者や就業者の需要をつかみ、順調。プロモーションによる顧客獲得策が奏功していることやエリアになかった業態であることが大きな要因だ。2月に先行オープンしたアーバンリサーチの「ファミリーマート」との協業新業態「アーバン・ファミマ」は全体開業から売り上げが上向き、Tシャツやリラクシングウェア、ハンカチなどの雑貨が売れている。
約1万人が就業予定の施設内オフィスワーカーの出勤増加が今後の鍵となるが、先行きは不透明だ。そのため、当面は近隣居住者や周辺の企業のワーカーに向けて飲食のテイクアウトやデリバリー、衣料品を含めた「自宅でリラックスできるシーンに対応した商品」を媒体物などで打ち出し、来館を促す。