ジュン佐々木進社長「文化力の向上を仕事に生かす」

2017/02/10 15:00 更新


 時代のニーズに合わせて、食やスポーツに事業領域を広げている。食とファッションの融合を掲げる「サロン・アダム・エ・ロペ」(サロン)、ファッションとスポーツの融合がコンセプトの「ナージー」は試行錯誤を重ねながら、形になってきた。成長分野であるECは社内に撮影スタジオを置くなどして、全社員の意識を高めていく。

 

“我々の常識をアップデートしていく必要がある”

■中間層は再定義が必要 

――食の分野に力を入れている。

 食へのこだわりがマス層に広がり、食に対する興味は圧倒的に大きくなっています。単純に「○○料理を食べる」「おいしいものを食べる」ではなく、例えば茶道は、お茶をたしなむことを中心とした総合芸術です。そういった部分での食の奥深さが、まだまだ発展途上で、いろいろな発見があって刺激的です。昨年、食の可能性を探るフードラボを立ち上げました。売り上げが上がってきたサロンをハブにしながら、いろいろなチャネルで食に関する事業を展開していきます。

――ナージーの今後の展開は。

 やってみて分かったのは、ファッションとスポーツのニーズは違うということ。事業の方向性を考えるとスポーツをしっかりやっていくべきだと考えていて、物販だけでなくスタジオジムも作ります。高い設備投資をしてプールを作ってという従来のジム経営ではなく、採算性を考えて、楽しみながらできるエクササイズをリサーチしているところです。

 ――既存事業で好調なのは。

 顧客視点の商品開発が根付いてきた「ビス」は伸び率が高い。コストパフォーマンスも支持されていて、17年春夏物では990円のティラウスを作りました。消費のマーケットは二極化しており、その二極化の真ん中の部分の幅が太くなっていると感じています。中間層が悪いと言いますが、その中間の定義が変化していて、我々の常識をアップデートしていく必要があります。

 「メゾンドリーファーキオスク」も好調です。5周年を迎える「メゾンドリーファー」は今春、新しいラインを立ち上げます。これまで梨花さんをエンジンに進んできましたが、この先どういうふうに事業を進めていくかを考えた時に、有名メゾンのデザイナーが変わっていくように、交代しながら新しい価値を作っていく可能性もあると考えています。

 ――今年の重点施策は。

 ECはすごく重視しています。これからは、ECネイティブにならないと生き残れない。当社は早い段階からSPA(製造小売業)をやってきましたが、ECという新しいチャネルは会社の歴史の中でも初めて。「ECのことはEC担当者で」と物事が進みがちですが、それではダメで、会社全体で意識を高めていく必要があります。

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佐々木進社長

“ ファッションだけを見ていたら、いい接客はできない”

■目指すはT字の人材 

――社内外で文化力向上に取り組んでいる。

 昨年、国民総文化力を高めるために「ユーアーカルチャー」というテーマを掲げました。それを機に、社内ではアート部や食部、スポーツ部など自発的に部活が生まれました。目的と活動内容が明確であれば、会社から補助を出しています。部活は仕事にも生きています。例えば、食部のワインテイスティングは、味や香りを言葉で形容することが、販売員の接客技術の向上につながりました。接客は、基礎知識を入れるだけで表現の幅がぐっと広がります。今後、販売スタッフの教育プログラムにも取り入れたいと考えています。

 ファッションだけを見ていたら、いい接客はできません。目指すのは「T字」の人材。Tの縦線は専門知識、横線は他の分野の知識を表し、浅くていいからいろいろな分野のことを学び、そこから得るさまざまな視点を専門分野に生かしていこうという考えです。



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