《ローカルでいこう》ニットの国産比率増やしたい アークインターが支援する徳島ニットファクトリー 「ホールガーメント」23台に
徳島市から吉野川をさかのぼること60キロ、山河に囲まれた自然豊かな場所に徳島ニットファクトリーがある。OEM(相手先ブランドによる生産)のアークインターナショナル(兵庫県西宮市)が旧馬渕繊維から14年に引き継いだ工場だ。国産、日本人社員にこだわり、「この工場を核にして、ニットの国産比率を少しでも増やしたい」と青木光弘代表取締役会長は夢を語る。
(山田太志)
新鋭機も導入
設備は島精機製作所の無縫製横編み機「ホールガーメント」(WG)、自動横編み機、リンキング、仕上げ加工一式を揃える。WGは初期の機械から導入しているが、アークインターのグループ会社になって以降、15年から新鋭機を含めた10台を相次ぎ導入し現在は23台まで増えている。WGの能力は年産8万枚、レディスを主に生産する。

WGに目が向きがちだが、年産13万枚の能力を持つ自動横編み機を活用した物作りへの評価も高い。自動横編み機は、メンズとカーディガンなどの学生服向けがほぼ半々を占めている。学生服は500近い学校の特注に合わせた型紙を揃え、納入日の集中やきめ細かい追加に対応する仕組みを確立している。有力学生服企業から安定した受注がある。
最近は、メンズ向けに高密度の、かっちりしたニットがセレクトショップ向けに好調だ。独特の目のきれいさが評価されているほか、48双糸の3本揃え糸の活用をはじめ、学生服で長年培ってきた素材のノウハウも力を発揮する。そのほか、「クージー柄」と呼ばれるカラフルなニットなども自信作の一つで、最近引き合いが強い。過去何十年にもおよぶデザインの蓄積、従来機と新しい機械との組み合わせが多彩なニットデザインを生み出す。
青木会長は、大手総合総社を定年まで勤め上げ、91年にアークインターを設立した。国内生産が一番疲弊しているニット工場を支援した背景には、「自分自身が草創期から製品輸入を手掛けてきた張本人だから」との思いもあった。自身は布帛畑を長く歩み、ニットは「ズブの素人」と話す。工場買収を機に、ニット部を作り、6人のスタッフを配置した。「編み機がこんなに高価だとは思いもしなかった」と苦笑する。

東京で展示会
東京で2カ月に1回、展示会を開催している効果もあり、ニット事業は着実に拡大、徳島ニットファクトリーの人員もスタート時の30人から44人に増えた。80歳を超えても青木会長は東奔西走。「まずは、この工場が力をつけること。その後は日本各地のニット工場と連携、場合によっては支援しながら、チームを作って新たなビジネスモデルを作りたい。1%未満の国産比率が2%に戻せれば」。それが夢だ。

(繊研新聞本紙8月10日付けから)