黙示録の地で日欧テキスタイルアート展(松井孝予)

2014/10/19 15:35 更新


■「アポカリプス」から日欧「コンテンポラリー」のテキスタイルアートへ

 パリ・モンパルナス駅からTGVで1時間半。

ロワール渓谷に位置し、ユネスコ世界文化遺産に登録された都市アンジェ。

 この都市にある、ロワールの古城で最西にあるアンジェ城塞 / CHATEAU-FORTERESSE D’ANGERSは、17の円塔、全長660メートルの城壁を持つその壮観な姿だけでなく、現存する最古のタピスリーといわれる14世紀に制作された縦5メートル、長さ107メートルの『ヨハネの黙示録』を有することでも知られている。

 

 
ジャン・リュルサ作 『世界の讃歌』

 

そしてフランス人アーティスト、ジャン・リュルサ(1892〜1966)が、この『黙示録』からインスピレーションを受け制作した大作『世界の讃歌』が展示されるジャン・リュルサ現代タピスリー美術館 / MUSEE JEAN-LURCAT ET DE LA TAPISSERIE CONTEMPORAINE で開催されているのが、現代の日欧テキスタイルアーティストのコラボ展 ” ASIE EUROPE 2 / ART TEXTILE CONTEMPORAIN” だ。

 

 
美術館の庭

 

■作品を通して理解し合う

このコラボ展は、二人のアーティスト、福岡在住の石井香久子さんと、ルクセンブルグ人のエルニー・ピレさんのベルギーでの出会いから始まる。

 

 
Kakuko ISHII  “Japanese paper strings-Musubu”  2012 水引

 

石井さんとエルニーさんは09年、福岡アジア美術館で開催された合同展に参加。ここから合同展が欧州に広がり、11年にこのジャン・リュルサ現代タピスリー美術館でアジア・ヨーロッパ展が開かれた。

「作品を通して日欧アーティストたちが理解し合う」と、第2回の開催のために来仏した石井さんは述べ、また同展の委員を務めるエルニーさんは、「糸によるアートは多元的、クリエイションは特異」とテキスタイルの魅力を言葉にした。

 ” ASIE EUROPE 2 ” では、日本から17人、欧州から18人のアーティストたちによる、「モノクローム」をテーマに、「フェミニンな存在」「人工物」「森の記憶」「イメージと構成」「メゾンの空間」「庭」の6つの世界を通して40作品を展示する。

シルク、コットン、ウール、リネン、レイヨン、紙、ガラス、木、竹などの素材を、時間と思考を注ぎ込みながら織る、編む、縫うの巧みな技でカタチを作り、刺繍、絞り、染色の伝統文化で仕上げられた作品は、見る者を創造の交流へと誘う。

またこの展覧会は、構築的であり限りなく繊細な作品で、欧州に新風を吹き込んだ日本の現代テキスタイルアーティスたちへのオマージュとも受け止められる。

 展覧会 ” ASIE EUROPE 2 / ART TEXTILE CONTEMPORAIN

2015年1月4日まで

MUSEE JEAN-LURCAT ET DE LA TAPISSERIE CONTEMPORAINE

開館時間 10時〜12時 14時〜18時

月曜閉館

musees@ville.angers.fr

 

 
Mitsuru KUROKI  ”Fire of tongue”  2013 ガーゼ、コットン

 
Yukako SORAI  “Enigma”  2013 ウール 

 
Hideho TANAKA  ”Vanishing & emerging”  2011 紡糸 

 
Lidya HIRTE  “Frozen movements”  2013 コットン、墨、エナメル 

 
Koko SHIMAMURA  ”Feel” 2013 リネン、ウール、フェルト、シルク 

 
Françoise MICOUD  “Petrified boughs abandoned to time’s pigmentation”  2013 コットン、樹脂、レース




松井孝予

(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。



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