メッスにカルチャーの桜咲く_ 大規模な日本文化展
Centre Pompidou-Metz ポンピドゥーセンター・メッス
パリ東駅からTGVで約1時間半。フランス北東(グラン・テスト)地域圏(旧ロレーヌ地方、あのキッシュロレーヌで有名な)のメッス市へ。
建築家坂茂氏のデザインによる白いシャポーを被ったようなポンピドゥーセンター・メッスで、" UNE SAISON JAPONAISE / ユヌ・セゾン・ジャポネーズ " 、ジャパンシーズンと題した企画展覧会が5月14日まで開催されています。
そのスタートをきったのは、昨年9月から今年1月中旬まで開催された日本建築展「ジャパンネス」。建築家磯崎新氏の著書、7~20世紀までの建築における「日本的なもの」の本質を探った " Japan-ness in Architecture " から同展のタイトルがとられ、1945年の戦後の破壊と再生から現代までの建築を6つのピリオドで展示。9~12月迄、なんと来場者数約14万人!
今年は日仏交流160周年。これを祝い7月からパリの美術館や文化施設を中心に、これまでにない規模の「ジャポニスム」展が展開するのですが、ポンピドゥーのジャパンシーズンはそのプレリュードとして大ヒットを飛ばしています。
ジャパンクリエイションのパノラマ
建築展に続き現在開催されているのが「ジャパノラマ」展(3月5日まで)。
そのタイトルがヒントになっているように、70年代以降のビジュアルアート、建築、デザイン、ファッション、サブカルチャー、文脈のつけづらいジャパンクリエイションを「新しい視点」で、108人のアーティストの作品を展示。まさにパノラマ。
キュレーションは東京都現代美術館参事の長谷川祐子氏。そして建築家ユニット「サナア」の姉島和世氏と西沢立衛氏が、セノグラフィー(展示の演出)を手がています。
「新しい視点」_ ここではクリエイション年代記のパノラマではありません。70年代から今日までのクリエイションを、6つのテーマで編集。
セクションA 奇妙なオブジェクト / ボディ ポスト−ヒューマン、B ポップ、C コラボレーション、D /抵抗のポリティックス&ポエティックス、E 主観性、F 物質の関係性&ミニマリズム、の6テーマが島のように配置されています。
島のひとつひとつがいくつものジャンルで構成されているので、その新鮮さといったら日本人にとっても、いやフランス人より自国の文化を知る日本人とってより一層刺激的。
例えばセクションAには、「コムデギャルソン」に、YMO、ダムタイプなどがあるのですが、このハイブリッドな編集には、YMO増殖人形へのテクノ的な「懐かしさ」などぶっ飛びます。
セクションBの展示作品のひとつ、パルコ広告シリーズ。これを「スゴイ!」と新たに評価できる機会をもてるのも、この展覧会のおかげ。
横尾忠則のポスターを集めた展示室、草間彌生の『無限の鏡の部屋』を一緒に鑑賞できるのも、「ジャパノラマ」の素晴らしいところです。
モードでは「コムデギャルソン」だけでなく、「アンリアレイジ」「ハトラ」「マメ」「ヨージヤマモト」のコレクションも。時代性からではなくコンセプトから語られているのが面白く、それぞれの鋭さをさらに引き立てている。
さてこのジャパンシーズンのフィナーレを飾るのは、1月下旬から開催の " DUMB TYPE "展。
3月3、4日には坂本龍一とダムタイプの高谷史郎による コンサートパフォーマンス" Dis-play "の公演も(パリコレですね、この時期は…)。
展覧会の方はまだまだ続くので、今度ご紹介しましょう。
展覧会の最後を飾る作品 黒いシリコンオイルが糸の雨のように続く。美しくも恐ろしくも。
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。