【記者の目】デザイナーブランドの21年春夏展示会 デジタル化で浮き彫りになる対応力の重要性

2020/11/03 06:27 更新


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 コロナ禍を経て、地方のバイヤーは東京に、日本のバイヤーは海外に行くことができなくなった。そこで大きく変化したのは、展示会の開催方法だ。6月以降、各地で開催されているデザイナーブランドの21年春夏展示会は、アポイント制のリアルな展示会と並行して、Zoomや動画配信などのデジタルが駆使されるようになった。デジタル展は、実際に服に触れられないのが最大の弱点。高額な商品を発注するのは一層難しい。そこで、手助けになっているのが、ブランド側の丁寧な接客やきめ細かいサポートだ。デジタル化が進むなか、最もアナログな対応力が重要になっている。

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いつも以上に下準備

 7月にデジタル開催されたパリ・メンズコレクションには、パリ進出して間もない「オーラリー」(岩井良太)も参加した。日本ではビジネスも順調で、評価の高い人気ブランドだが、パリではまだ新進ブランド。ようやくつながりができた卸先や興味を抱いてくれているバイヤーとのつながりを途切れさせたくないという思いから参加を決めたという。

 新作を撮影して動画配信したほか、ルックブックやラインシートといったデジタル資料を作るなど、いつもの何倍も下準備を重ねた。目を引いたのは、つながりのある店に送ったというお重のような木箱。中には、新作に使った生地や糸だけでなく、新作の柔らかい色や質感を彷彿(ほうふつ)とさせるオブジェと、スタッフを撮影したチェキ(写真)が入っていた。実際に服を送ることはできないが、コレクションやブランドのムードを直接感じられるセットになっており、展示会に来られないバイヤーの不安な気持ちをサポートする存在になった。

「オーラリー」が21年春夏コレクションに合わせて取引先に送った木箱には、オブジェが入っていた

サンプルを送付

 ロンドンの「JWアンダーソン」もデジタル配信とともに、コレクションに使った端切れに手紙を書き、ルックブックのモデルに使ったマスクを同封して取引先に送った。「みんなの心が温まるように」という思いが込められていたという。

 日本での代理店を務める三喜商事との契約は1年ほど前に始まったばかり。きちんと見てもらってしっかりビジネスにつなげたいという双方の思いがあり、デジタルプレゼンテーションの後に、多くのサンプルを日本に集めて受注会を行った。7月段階では、海外ブランドのほとんどが日本にサンプルを送ることができなかったが、そのフレキシブルな対応はつながりを強く感じさせた。そのかいあってか、日本での受注は好調だった。

「JWアンダーソン」は、21年春夏コレクションに合わせて生地などを送った

 丁寧にケアするブランドはほかにもある。「サポートサーフェス」(研壁宣男)は東京に来られない地方の卸先、数店舗にサンプルを送って受注をとる。卸先の多い中国にもサンプルを送る予定だ。「ウジョー」(西崎暢)は急遽、大阪での展示会開催を決めたところ、新規のバイヤーからもアポイントが入った。「デジタルショーだけではなく、展示会で伝えないともったいない。どういう姿勢でこのシーズンに挑むかが大切になっている」と語った。

 ファッションディレクターの中島英恵さんは、実際に展示会に来られないバイヤーに向けて、Zoomなどを通じて商品のポイントを伝える機会が増えた。「出張に来られないバイヤー本人は商品を触ることができません。実際に商品が届いたときに温度が下がるのは残念なので、(実際に見ている私が)立体についてしっかり伝えてフォローしている」という。

 そういった状況下で、きめ細かいサポートのあるブランドの、伝えたい気持ちが買い付けの後押しになっており、特に日本のブランドに多かったという。「バジェットがタイトになるなか、安くないブランドに危険は冒せない。厳選して売らなければいけない時、フォローしてもらえるかどうかは大きい」

 リステアの柴田麻衣子クリエイティブディレクターも、「仕入れ予算が減るなか、既存のブランドのなかでも、発注しているのは訴えかけてくるブランドのみになっている」という。そんななか、パリで発表する「ジャックムス」は、今までよりも映像のコンテンツを充実させるなど受注体制を整えていたため、発注額は全く減らなかったという。

 この数カ月で、よく聞いたのは「信頼と実績」という言葉。コレクションが良いことはもちろんだが、通常とは違う状況下において、ブランドと卸先の信頼関係は今まで以上に重要になっている。

本社編集部コレクション担当=青木規子

(繊研新聞本紙20年9月28日付)

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