自粛ムードのタイ、日系企業は平常通り

2016/10/21 02:40 更新


黒に合わせモノクロ雑貨売れる

 【バンコク=高田淳史】13日にプミポン国王が亡くなったタイ。タイに進出する日系企業の多くは平常通り営業し、大きな混乱は起きていない。ただ、政府は1年間喪に服すことを決め、国民には30日間、娯楽や祝い事を控えるよう要請した。「自粛ムード」は少なくとも年内は続くとみられ、低迷するタイの国内消費がさらに悪化する恐れがある。

 今のところ、日系企業の事業への影響はほとんど見られない。丸紅タイランドは国王が亡くなった翌日の14日は、国民が喪に服すことに配慮し、休みにした。タイ蝶理も14日午後は休業したが、両社とも17日からは通常営業に戻った。合繊原糸、紡績、テキスタイル製造会社などを持つ東レグループも通常通り稼働。14日、一部タイ人スタッフから休暇申請があったため、許可を与えた。「タイ国内では心配された大きな混乱もなく、国民は冷静に受け止めている」という。

 伊藤忠商事グループのIPAタイランドも通常通り営業した。政府機関や銀行、交通機関も平常通りで事業活動に支障は出ていない。

 ただ、今後は影響がありそうだ。タイの自動車産業は苦戦が続くが、「販促イベントの中止などから新車が売れず、内装関係がさらに落ち込む可能性がある」とタイ蝶理。丸紅タイランドも「消費が落ち込むと、回復しつつあったタイ国内への生地販売に響く」と警戒する。

 黒い服が飛ぶように売れている現象について、バンコク伊勢丹では14~16日はレディス、メンズフロアで前年同期比2割から倍増ペースに売り上げが伸びたが、「すでに落ち着いてきた」。今後はスカーフや傘、靴など雑貨関連で黒の商品を充実する。東レグループで短繊維織物とエアバッグ基布、長繊維タフタのラッキーテックスは「黒の裏地のオーダーは増えてはいる。しかし、それ以外の色のオーダーは来ていない」という。単純なプラス要因とはならないようだ。

 自粛ムードはしばらく続くため、タイ国内消費に影を落とすことは避けられそうにない。すでにバンコク伊勢丹では、リビング関連などで売り上げが落ち始めた。12月に大きなギフト需要があるが、「少なくとも年内は消費はかなり抑えられる」と落ち込みを想定する。「販促活動や広告は控えるので販売を伸ばせる環境にない」など、低迷するタイの国内消費をさらに冷やす可能性を、多くの駐在員は指摘する。

黒い服だけでなく、合わせる黒や白の雑貨も売れている
黒い服だけでなく、合わせる黒や白の雑貨も売れている


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