レント・ザ・ランウェーに思うこと(杉本佳子)

2016/04/07 00:00 更新


 服とアクセサリーのレンタルをオンライン中心に展開している「レント・ザ・ランウエー」が無制限で毎日レンタルできるプログラム「アンリミテッド」を開始した。

 私にはちょっとエポックメイキングなニュースだった。今までは、服をレンタルするといえば、特別なオケージョンで着る服に限られ、着る機会が他にないのに買ったり仕立てたりするのはもったいないからレンタルする、というのが一般的な感覚だったと思う。

 それが、毎月139ドルを払うことで、350以上のブランド、それも普段だったら手が出ない(あっ、あくまでもワタクシの場合ですが)デレクラムやジェイソンウー、ジャンバティスタヴァリ、ナルシソロドリゲスといった高級ブランドの服もとっかえひっかえ着られるという話なのだ(もちろん、そこに出てくる服は、各ブランドが扱う服のごく一部なのだけど)。



 レント・ザ・ランウェーは2~3年前に無制限で借りれるプログラムを試験的に実施したことがあり、当時から無制限で借りれるプログラムの好機を探っていた。今回、正式に発足したが、ウエブサイトではカジュアルな日常着を着まわしすることを提案する写真を使っている。

 このようなカジュアルな日常着を「買う」のではなく、「頻繁に借りてすませる」女性たちが多くいるという市場調査結果が出たということなのだろうと、勝手に推察している。

 目立つ色柄やデザインの服であれば、何回も着るのは気が引けるから借りてすまそうというのはわかる。でも、レント・ザ・ランウェーのアンリミテッドの紹介ページに出ている写真は、むしろベーシックな色や無地の服が多い。それでも借りようと思うのは何故かと考えてみた。



 1つ考えられるのは、インスタグラムやフェイスブックにちょくちょく自分の写真を載せたい女性なら、たとえカジュアルな普段着でもなるべく同じ服を着ている写真は載せたくないはず、ということだ。
ソーシャルメディアの浸透が新たな需要を生み、このビジネスモデルを招いた、という見方もできるのではないだろうか。

 ウーバーやエアービーアンドビーなど、シェアするカルチャーの広がりが話題になっているが、服やアクセサリーもそういう時代に入ってきたということなのかもしれない。断捨離が流行し、モノをもたない生活、本当に気に入ったものだけ手元においておく、というトレンドとも合致する。

 「モノをなるべく持たない」思考とソーシャルメディアの浸透は、さらに新しいビジネスモデルを生み出すだろう。その反動として、「シェアすることができない」モノや体験が注目され、その価値が上がることもあると思う。私としては、両方を注目して見ていきたいと思っている。



89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッシ ョンビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで 20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜 更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダム に紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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