未来を指し示す全米小売業大会(杉本佳子)

2016/01/26 00:00 更新


 毎年1月半ばの日曜日から水曜日まで、ニューヨークで開催される全米小売業大会(NRF)。全米小売業協会が主催する、世界最大の小売業界のコンベンションだ。今年は17日から20日まで、ニューヨークのジェイコブジャビッツセンターで開催された。



NRFの会場ロビー


 私は1994年からこの大会を取材しているが、全米小売業大会が始まると、私にとって1年で最も忙しい時期が始まる。この大会、今年で第105回となった。100年以上も前にこういう大会をやろうと思い立った人たちは凄いと思うし、100年以上続けてきた人たちも凄いと思う。

 しかもここ数年、参加者数は毎年右肩上がりで、今年は85カ国から34000人以上が参加した。いつも紙面ではセッションの内容のまとめしかご紹介する機会がないので、どんな大会なのか、この場をお借りして写真中心に紹介させていただき、読者の方々の理解と関心が広がったら嬉しく思う。


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 大会はセッションと展示会場に大別される。セッションは今回130以上あり、さまざまな会場で同時にいくつも開催される。その中で一番広い会場がこちら。スーパーセッションと名付けられる大きなセッションは、ここで行われる。

 私はいつもできるだけ前の方に座るのだが、遅く来ると空席を見つけにくいこともある。朝は無料のコーヒーとドーナツのセルフサービスがある。


 
スーパーセッションステージ


スーパーセッション客席


 スーパーセッションのステージは、インパクトのある動画や仕掛けが多く、華やかなイメージ。毎年、政財界を退任した著名人が講演者として登場する。過去にはクリントン元大統領、ブッシュ元大統領、バーナンキ米連邦準備理事会前議長などが登場し、今年はコリン・パウエル元国務長官の話を聴くことができた。



コリン・パウエル氏


 パウエル元国務長官はハーレムで生まれ、ブロンクスで育った生粋のニューヨーカー。「この国を所有しているのは我々(一般人)で、政治家ではない」「人を信用したら、その人に権限を与えること。そうすれば、彼らもあなたを信用する」などの話が印象に残った。

 パウエル元国務長官はニューヨークのストリートベンダーからホットドッグを買うのが好きで、国務長官時代も買っていたという。

 あるとき車を降りてホットドッグを買おうとしたら、そのベンダーは周りにボディガードが5人、パトカーが3台いるのに気付き、慌てて「俺はグリーンカード持ってるぞ!グリーンカードは持ってる!」と叫んだというエピソードや、奥さん(「僕の奥さん53歳なんですが」と言ったら、会場から拍手がわいた。苦笑)や娘さんたちの話もしてくれた。


 
スーパーセッション客席後方


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 今年から新たに始まったことがいくつかあるが、その1つは、セッションへのフィードバックを携帯アプリで送ると1回ごとに1ドルずつチャリティーへの寄付になるシステム(写真下)。




 かつてはアンケート用紙に記入して渡す方式がとられていたが、それを実行する人は少なかったのだろう。アプリで記入するならどこにいてもできるし、しかもそれが寄付になるのであれば、今までより反応があったのではないかと思う。

 フードトラックも今回初の試み。いつも長い行列ができていた(写真下)。




 プレスルームでは一応無料のランチが用意されるので、私はまずそちらに行く。1人1つと制限されているのだが(キビシー!男性なら足りなさそう!)、それでも月曜日はランチを食べる時間自体がなく、火曜日に行ったときはもう甘いお菓子しか残っていなかった!(涙)



 展示会場の広さは2万平方メートル以上。568社が出展し、東芝、キャノン、デンソー、富士通など日本の会社も見られる。この展示会場の中で行われるセッションも人気が高く、満員で入れないこともある。無料の10分マッサージコーナーもあり、時間の合間を縫ってやってもらえたのはラッキーだった!



展示会場


 展示会場では、さまざまな実演も行われている。インテルは火曜日の朝にプレスツアーをやっていた。こちらは、足を計測するスキャナー(写真下)。




 スキャンしたデータは、タブレットに表示される。3Dで見れる足の形状は、指でなぞることでさまざまな角度から検証することができる。これにより、足にあう靴をあらかじめ選べる可能性が高くなるというわけだ(写真下)。



 今回、日本からの参加者数は177人だった。カナダやブラジル、フランスなどに比べたら圧倒的に少ないが、昨年より増えて、アジアでは一番多くなった。

 私は22年間取材してきて、毎年何かと学ぶことがある。世の中がどういう方向に向かっているのかを知ることができるし、インターネットがまだほとんど実用化されていなかったときに「いずれこうなる」と説明されて夢物語のように思ったことが数年後には実現し始めた。

 日本からの参加者が今後も増えて、この大会から得たものを日本の小売業界に還元できる人が増えることを願っている。
 


89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッシ ョンビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで 20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜 更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダム に紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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