日本の紡績産業は縮小の一途をたどってきた。それでも国内生産を守り続けてきた中小紡績の技術力が今、脚光を浴びている。得意技に磨きをかけ、それを生かしつつ、新しい原料の活用や設備投資、企業間連携など〝攻め〟に転じている。尽きることのない探究心がその源泉だ。コロナ禍を経て、視線は海外へ向き、市場開拓にも本腰を入れ始めた。
(小堀真嗣、浅岡達夫)
生産量が倍増
「欧州向けなど糸輸出が拡大し、生産量はコロナ禍前より倍増している」と話すのは佐藤繊維(山形県寒河江市)の佐藤正樹社長。同社はニット用の梳毛紡績が主力事業。原料から開発する差別化糸が世界で注目されている。世界的な梳毛糸の供給不足という背景もあり、イタリアなど欧州のニッター、日本のテキスタイルやアパレルメーカーから引き合いが急増している。
梳毛紡績はコロナ下に受注が減り、一時は事業撤退を考えるほどまで追い込まれた。家業を継ぐ意思を示した長男の入社を機に「10年後に紡績事業が続くように」と一転、設備増強に乗り出した。PRにも積極的だ。最近は欧米での国際ニット糸展に参加し、販路を広げている。