【専門店】若い世代の支持で成長するメンズセレクトショップ デザイナー服の魅力を共有

2022/07/18 06:28 更新


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 国内外の若手デザイナーブランドを積極的に扱うセレクトショップが、若い世代の支持を得て力強く成長している。とりわけ今、ファッションへの投資を惜しまないのは20代から30代の男性だ。服に向き合い、独自の視点でブランドの魅力を伝える店にはおのずと服好きが集まり、クリエイションの深みを共有するビジネスの循環を成り立たせている。

パレットアートアライブ(大阪・南堀江)

ブランドへの注目と一緒に店も成長

 大阪・南堀江にある「パレットアートアライブ」は、オーナーの二又和征さんが12年4月に創業、認知度にとらわれず、実力のあるデザイナーの洋服を扱ってコアなファンをつかみ、ブランドの成長とともに事業規模を拡大してきた。18年後半には名古屋店も出店した。

パレットアートアライブ大阪店の売り場面積は約35平方メートル。イベントは顧客も設営に加わり店作りを楽しんできた

 その少し前に入社し、大阪店の運営から仕入れまで全てを任されている河村伊将店長は、学生時代に同店に魅了され、通い詰めた顧客の一人だ。二又さんは4年ほどで現場を退き、経営に専念しているが、「オーナーが最初に仕入れた『リトルビッグ』『シュウオムフェム』『ベルパー』の3ブランドは、僕たちが急成長するアクセルを踏むきっかけとなった重要な存在。ブランドが注目されて店の認知度も上がり、一緒に成長してきた」と振り返る。いずれも、物作りの強さが備わり、今では20代後半から30代のファッション好きを引き付ける売れっ子だ。

河村店長

 無名の時期から知っている顧客には、そのブランドに誰よりも強い思い入れが生まれる。デザイナーも、立ち上げ当初から取り扱いを続けてくれた店と顧客に対する信頼は深い。とりわけメンズのテーラードスタイルを強みにするリトルビッグは、18年秋冬コレクションが当たり、それを機に同店に訪れる客もぐっと増えた。19年以降、仕入れ枠は大きく取っているが、全てのラインナップを見て選びたい顧客に向けて受注会を行う取り組みが続いている。

今秋冬物の「リトルビッグ」の受注会ではテーラードアイテムのフルラインナップを見せる

 若い世代の関心を引くブランドを扱っていることは、コロナ禍で一段と伸び代を広げた。20年の緊急事態宣言を機にインスタグラムを毎日更新するようになり、20年初めは5000人程度のフォロワー数が年末に9000人を超え、今では1万5000人となった。新規の来店客は増え続けており、大阪店の21年の売り上げは、18年と比較して倍以上になっている。

 25歳の河村さんが常に大事にしているのは人間関係だ。学生時代にファッションの楽しさを諸先輩から教えられ、今は伝える立場となった。インポートブランドにも興味はあるが、「日本のブランドは、デザイナーと直接、コミュニケーションを取れる強みがある。長く良い関係を築いていきたい」と話す。何よりも、店頭に立って来店客と会話することに、面白さがある。自分より若い大学生の来店も増え、興味津々で質問してくる。「洋服のことを知らないから、ピュアにクリエイションを受け入れる素直さがある。長く扱っているブランドでも、僕たちとは別の目で見ていて、新たな魅力に気付かされる」という。

大学生など若い世代に90年代の面白さを伝えたいと、当時の雑誌を閲覧用に置いている

キャロル(東京・神宮前)

静かに伝えるプロダクトの強さ

 東京都内では、エンセンスの「キャロル」が神宮前5丁目で静かに発展し続ける。創業は16年の4月。キャットストリート近くの裏路地で古着屋として始まり、「自分が届けたい服を扱うなかで、世界観のあるデザイナーの服をミックスして販売するようになった」と代表の浅川喜一朗さんは話す。現状はほぼデザイナーブランドの品揃えで、古着は期末に在庫が欠けた時に差し込む程度だ。自身もデザイナーとして「シュタイン」を手掛けているが、扱いブランドの一つに過ぎない。「縁があって出合い、長く付き合いたいと感じて仕入れる」ブランドの数が徐々に増え、手狭になったことから、昨年4月に近くの表参道寄りの立地に移転した。

静かな空間に徹し洋服とファッション雑貨の面白さを伝える

 「価値の変わらない売り方を大事にしている」と浅川さん。約90平方メートルの路面店を一歩入ると、白い壁面の空間に、ミニマルなラックで整然と並べられたたくさんの洋服の存在が目に飛び込む。スタイリング提案などの味付けはせず、セレクションが全て。そこに浅川さんと同じ30代を中心とした洋服好きを誘う魅力がある。「古着屋で始めた当初と変わらず、『ここに来れば何か面白いものがある』に応えられる数は揃える。コーディネートは、僕たちの提案ではなく、自分で考える〝余白〟を残す。服単体で見てもらって『こう着よう』が楽しい。お客さんに気付かされることもある」。ECも同様に、単品の美しさを静かに見せるスタンスだ。

 仕入れの基準は、プロダクトとしての完成度が備わって、「“いいな”を強く感じるかどうか」。生地の風合い、縫製の仕上がりの良さやアートワークなど「この服のここがすごい」を店頭で伝える初志は変わらない。最近は、独特のムードを放つ洋服に興味をひかれる。顧客の期待は、キャロルの店頭で見つける楽しさにあり、コロナ禍でも売り上げは落とさず成長してきた。ECの売り上げ比率は10%程度という。

「キャロル」には生地の風合い、フォルム、仕上がりの良さなど主張のあるリアルクローズが整然と並ぶ

 基本はメンズを扱い、20%ほどレディスブランドも扱う。購入層を意識するというよりも、「レディスブランドにしか出せない雰囲気があって、一つの空間で奥行きが出てくるバランスが心地いい」という。配色のコントラストの利いたニットウェアを作る「タン」、さっそうとしたエレガンスを感じさせる「ハルノブムラタ」など浅川さんと同世代で、芯の通った服作りをしているブランドが並んでいる。将来は、「静かに寄り添う形」の一つとして、器や花器などの陶器も扱っていきたいと考え、「ふっと立ち寄ったら美しい物がある空間で、袖を通す楽しさを伝えていきたい」と話す。

一部扱っているレディスブランドにも物作りの強さが備わる

(繊研新聞本紙22年5月19日付)

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