「消費者は賢くなった」。レディスファッションブランドやショップの取材をしていると行く先々で聞く言葉だ。消費者はネット検索やSNS(交流サイト)を通じて商品の情報を調べ、比較検討し、一番良いと思う服を手に入れる。こうした作業はきりがないが、色々調べて買った後でほかに安い商品をネットで見つけるとがっかりする。賢くないと損をしてしまうという不安はときに消費者を疲れさせ、買い物がいつの間にかストレスになってしまうこともある。
今の消費者が求めているのは、あれこれ調べなくてもここで買えば間違いないと思える服なのではないか。消費者と信頼関係を結べるブランドが、これからの時代は強いはずだ。
ものづくりや価格への向き合い方が誠実であれば消費者に伝わるし、逆にそうでないものは簡単に見破られる。「お客様に対して誠実に、適正価格で販売したい。我々はものづくりのプロ。縫製や商品の仕上がりには服屋としての最低限のプライドがあります」と、あるレディスアパレルの担当者。世の中でセールが常態化するなかであえてプロパー販売を追求し、価格への信頼を守ろうとするブランドもある。
レディス商品は、オーセンティックなブランドが強いメンズに比べてトレンドの影響を受けやすい。それが旬や変化をもたらすのだが、「去年買った服が良かったからもう1枚ほしいけれど同じようなアイテムはもう売っていない。また探さないと」という場合にはおっくうな気持ちになる。安い服をあれこれ買い回るよりも、気に入った服やブランドがあればそれを大事に着たいというのが今のムードだ。オケージョン用のドレスや仕事で着るブラウスなど強みの商品を作り、「このブランドに行けばこういうアイテムが見つかる」という信頼を提供するブランドも増えている。
そして何より、女性はファッションを通じてよりすてきな自分になりたい。シルエットがきれいだからスタイル良く見える、カラーが絶妙で顔が明るく見える、着ていると気持ちがいい、わくわくして出かけたくなる。これを着ていると私は幸せ、それもファッションへの信頼の一つの形だと思う。
そこで繊研新聞は今回、“良い服を着よう”をテーマに「繊研新聞レディスファッション特集 vol.9」を発行した。この特集は年2回、レディス市場の最新の取り組みを紹介するカラータブロイド版特集で、今回17年1月号で第9号を迎える。
このページでは同特集をウェブ用に再編集し、業界をリードするファッション企業やブランドが考える、それぞれの良い服、消費者との信頼の形を紹介する。
-INTERVIEW- 30~40代女性にとって「良い服」とは?
注目ブランドのデザイナーやディレクターに、自身が暮らしの中で感じていることや消費者の求めるものを聞いた。そこから見えてきたのは、自分らしくいられて、様々な生活の場面ですてきに見える、気持ちが盛り上がる服だ。
ナゴンスタンス
仕事用の服は「エンフォルド」(バロックジャパンリミテッド)で欲しいものを作っていますが、休日用の服をどこで買えばいいんだろうって、数年前から思っていました。それで、18年春夏から「ナゴンスタンス」を始めます。
シティ
17年秋にトウキョウベースからデビューしたレディスブランド「シティ」を担当しています。都心で働く大人の女性に向けた“スーパーファブリックブランド”というコンセプトの通り、素材に重点を置いたものづくりが特徴です。
■注目ブランドの「ここにしかない服」
日々忙しい女性は、探しているアイテムやほかにないデザインが必ず見つかるようなブランドを求めている。仕事や食事、パーティーなどさまざまなシーンで女性の魅力を最大限に引き出す、注目ブランドのオンリーワンの価値とは何か。18年春に話題の新ブランドも登場する。
セルフォード
マッシュスタイルラボが18年春、女性のドレスを変える。「セルフォード」は“ザ・ファースト・レディー”をコンセプトに、ハレの場や思い出に残るシーンで女性を輝かせるドレスなどを提案する新ブランドだ。
トーナル
エムファーストのモード系レディスキャリアブランド「トーナル」は、働く女性の “スタンダードワードローブ”を追求している。「仕事着としてのきちんと感と今の空気感の両方がある」「ストレスがなく毎日のように着たい」など色んな意味で女性にとって“使える服”が、ファッションビルでも百貨店でも消費者に支持される理由だ。
ノエラ
レディスブランド「ノエラ」の魅力は、毎月登場するオリジナルの花柄プリント。「ノエラに行けばほかにはない柄のフェミニンで上品な服がある」と認知されており、これがブランドの考える “良い服” でもある。
■あの企業はなぜ女性に支持されるのか
女性に支持される服の裏側には、企業の数々の努力がある。それが、ほかの店ではなくどうしてもここで買いたいと思わせるブランディングにつながっている。あの企業の人気の秘密とは。
アルページュ
「アプワイザー・リッシェ」「マイストラーダ」「ジャスグリッティー」「リランドチュール」と、エレガンスファッション市場で存在感を発揮し続けるアルページュ。女性たちが本当にほしい服を提供するためのブランドの考え方について野口麻衣子社長に聞いた。