「スノーピークアパレル」が、人々の「自然指向」を踏まえた新しい日常着のスタンダードを作ろうとしている。スノーピークアパレルは、「キャンプウェア」という概念がまだ一般に浸透していないころに、現社長の山井梨沙氏が「ホームとテントを行き来する」をコンセプトに立ち上げ、わずか5年で売上高17億2000万円(19年12月期)に成長したブランド。20年秋冬からは山井氏はディレクションに専念し、若手5人が企画・開発を主導している。彼らにブランドが成長した理由やキャンプウェアのこれからを聞いた。
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――アパレルが成長したのは。
菅 ユーザーとブランドの距離の近さが影響した。キャンプイベントなどでユーザーから意見を聞けたり、こちら側のメッセージを直接伝えたりできる環境を生かせている。防虫ウェアは特に女性から求められた。キッズ品を始めたのも、ユーザーにファミリーが多いから。難燃素材を使ったベストセラーのタキビシリーズは、火の粉によって服に穴が開かないよう安心してたき火を楽しめるウェアを求められたため。「アパレルは嫌い」と面と向かって言われたこともあるが、こちらの熱意や企画意図を伝えると、のちに熱狂的ファンに変わった。
――市民権を得たキャンプウェアのこれからのテーマは。
菅 新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす時間が増えたために、家での生活や装いを見直す人が増えている。今後はキャンプシーンだけでなく、家でも同じ快適性やストレスのないウェアが望まれてくる。そこでホームの部分にもっと踏み込み、キャンプで培ってきたノウハウを、服作りに生かす。
豊川 日常を過ごすのに必要な機能を入れつつ、簡素化できるところは簡素化し、ストレスがない服をスノーピークらしく追求し、新しいスタンダードを作りたい。
坂田 日常着にも快適性を入れ込み、ニューノーマルのライフスタイルに食い込む。21年春夏コレクションでは、服というより日常を過ごすのに理にかなったギアを、アイテムを絞り込んで作った。例えば、近所への外出には使えるワンマイルウェアやスリッポンなどだ。
豊川 日々の生活とキャンプに使える程度のレインウェアなら、山登りまで求められるほどの透湿防水性はいらない。しかし、長期間使える耐久性は必要。だから劣化しにくい素材を採用し、一生もののギアとして着られるようにした。