シブヤ109ラボ所長のZ世代の恋愛・結婚観 プレッシャーや優劣はない。自由

2023/02/13 06:28 更新


 15~24歳の男女400人を対象に、恋愛や結婚観について調査を実施しました。調査では、「恋愛は人生に必要不可欠」と考えているのは12.8%にとどまる結果となりました。推しがいたり、打ち込みたい趣味があるなど、恋愛以外にも時間やお金をかけたい選択肢が増えていることが背景にあります。各自、自分が価値を感じるモノ・コトを楽しめば良いし、それが必ずしも恋愛でなくてもよいのです。

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8割が「不安」

 結婚に関しても同様に、結婚を必ずしも人生のゴールに定める必要はないと考えています。インタビューでも、「結婚はしたい人がすればいい」「自分は結婚では幸せになれなさそう」「好きな人とならいいけれど、適齢期だからといって妥協して結婚するのは嫌。子供もいらないから籍を入れる理由はないし、離婚は大変だから付き合うだけでいい」という声も聞かれています。

 多様な生き方や価値観が共存している社会。それがSNSなどを通して可視化され、共有されているなかで生きているからこそ、「絶対に結婚や恋愛をしなくてはいけない」というプレッシャーや、選択の違いによる優劣はなく、個人が自由に選択することとして捉えています。

 そして、結婚意向の有無にかかわらず、結婚において何かしらのハードルや不安を感じている人は8割以上に上り、特に「金銭面」「相手家族との関係」「出産・子育て」が挙げられています。

個と自立を尊重

 これはZ世代にとって現状の社会環境が、結婚や子育て(必ずしも結婚と子育てはセットではないですが)をするにも、お金も時間も気持ちもバランスを取りにくい状況に見えていることが要因として考えられます。

 収入はなかなか上がらず、ひとりで生きていくにも大変な世の中なのに、結婚してさらに子供を育てるとなると、金銭的な不安はぬぐえない状況です。また「個」を尊重し、パートナーとも互いに自立した関係を望んでいるZ世代は、結婚・出産後も互いに個としての人生を維持しながら、フェアに協力し合う仕組みも求めています。

 しかし現状は、仕事など個人の人生と家庭・子育ての両立の実現に不安を感じる意見が女性を中心に多く聞かれています。インタビューでも「結婚は楽しそうだけれど、出来ないことが増えそう。子供が出来たら仕事も制限されるのが嫌だ」「出産・子育ては相手の協力次第。自分の負荷が重いならいらない」といった声が聞かれ、家族としての人生と、個人としての人生のバランスが不均衡になってしまう可能性への不安を既に感じているようです。

 また、子育てに関しては、産休・育休取得を性別関係なく取得することができることが前提になっているものの、仕事に穴をあけることに対する不安を払拭(ふっしょく)できないこともハードルになっています。

 現在、日本では少子化対策の強化について注目が高まっていますが、未来を担う若者たちの恋愛・結婚・子育ての捉え方が変化・多様化していることにまず目を向けることが、この複雑な問題の解決の近道になるかもしれません。

●長田麻衣(おさだ・まい) シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。


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