シブヤ109ラボ所長のZ世代の成長意欲 組織構造のアップデートを

2024/04/10 06:26 更新


 4月を迎え、気持ち新たに新年度をスタートした方も多いのでは。今年1月に24年卒・25年卒の男女438人を対象に実施した「Z世代のキャリア観に関する意識調査」から、若者たちの仕事における「成長意欲」を考えます。

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個々のペースで

 まず「自分の市場価値をあげたい」と考えている若者は75.1%。AI(人工知能)に代わられないような仕事・スキルを身に着けたいと考える人も約7割を占めています。就職活動の段階で転職を見据えた「1社目」を選ぶ学生も多く、AIの発展で自動化される仕事も増えていく可能性があるなか、「市場価値」を上げるためのスキル向上に意欲的です。

 インタビューでは、「20代のうちは仕事に集中しようと思っているので、ゆるすぎる会社には入社したくない。働けるうちに働かないと、もったいない」など、結婚や子育てなどによるライフステージの変化が起きる前に、自身の成長に注力したいと考えている様子もうかがえました。

 では市場価値を上げるために必要な自身の成長において、どのようなプロセスを求めているのでしょう。ウェブ調査結果では、「自分のペースで成長したい」という回答は8割に上るのに対し、「誰よりも早く成長したい」は5割。相対的に成長したいのではなく、個々のペースを尊重し、自身の成長の絶対値に着目したいという若者の意識が見られます。

 個人のペースで成長して市場価値を上げたいと考えている若者たち。企業は成長の見える化や、個々のペースに合わせた成長支援の実現が必要となるでしょう。そして彼らの実現したいビジョンと、組織の仕組みがマッチしているのかも、同時に考える必要があるのではないでしょうか。

2人体制なら

 マネジメント職への関心について聞いてみると、約半数が「関心あり」と回答します。インタビューでは「結果として役職をもらうことになるならやってみたい」というニュアンスの回答が目立ちます。組織の上に立ちたい、責任のある仕事を任されたいというよりも裁量権の獲得に魅力を感じているようです。

 しかし、マネジメント職の在り方もアップデートの余地があるかもしれません。アパレルブランドの方とお話しした際、「20代の若手社員に店長への昇進を打診したところ、1人ではやりたくないけど、2人体制なら引き受けると回答があった」という話を聞いたことがあります。

 責任とプレッシャーへの不安が大きいため、それを分け合えるパートナーと責任者業務を全うしたいという意図です。皆さんは、自分の部下からこのような回答が来たとしたら、どのように感じますか?

 現在、多くの組織では責任者は1人です。2人体制の場合、給与や評価制度、採用など様々な組織の仕組みの見直しが必要になるでしょう。「立場が人を変える」と言われることがあるように、責任者1人体制でやってみたら、案外務めあげる可能性も十分あります。しかし、責任者を2人体制にすることで1人当たりの精神面・業務面の負荷が減り、サステイナブルなチームを維持することにもつながるかもしれません。

 もちろん、若者の意向をすべて受け入れ、過保護になる必要は全くありません。しかし、「これまで私たちの組織はこうやってきた」という固定観念を持ち続けることが、かえって組織の成長や人材の確保・育成において、障害となる可能性もあります。仕事の位置づけや成長のペースの多様化とともに、少子高齢化で人材不足が加速する今後、組織構造のアップデートについても考える余地がありそうです。

 5年後、10年後、彼らが働き手の中心になることを見据えると、まさに今、企業が組織における考え方や体制の在り方について、変化が問われているのかもしれません。

長田麻衣(おさだ・まい) シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。


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