「シブヤ109ラボ所長の#アラウンド20のヲタ活の実態」

2019/10/13 06:29 更新


 「ヲタ活」という言葉をご存じでしょうか。「ヲタ」(オタク)と聞くと、ネガティブやマイノリティ―なイメージを抱く方もいるかもしれませんが、その感覚はもう古いと認識した方が良いでしょう。今のアラウンド20(15~24歳)、特に女性にとってヲタ活は、誰もが行っていることであり、「○○ヲタ」と周囲に公表するなど、アイデンティティーの一つです。

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予算は年間15万円以上

 渋谷109館内にて「ヲタ活に関する調査(N=230)」を実施したところ、昨年の調査と同様、約7割がヲタであることを自覚している結果となりました。ヲタ活にかける費用は「年間15万円以上」という回答が15.6%と最も多く、限られた収入の中で高い割合を占めていることが予想できます。グループインタビューでも「年間でかかっているお金のことを考えたくないくらいお金を費やしている」という声が多々あり、アルバイトで稼いだお金をヲタ活資金に充てるなどの実態も分かっています。

 そんな彼女たちのヲタ活は、SNSを中心に繰り広げられています。ヲタ活にはインスタグラムよりもツイッターがメインで使われますが、「ヲタ活専用アカウント」を設けることが一般的です。

 ヲタ活専用アカウントを活用する目的の一つは「ヲタ友を作ること」。これは「同じ志向を持つヲタとつながり、コミュニケーションをとりたい」という意識から起きている行動です。

 実際にヲタ友を作るためにSNS上で行われている行動として最も多いのは「ハッシュタグをつけて投稿」(59.3%)、次いで「ハッシュタグ検索」(55.7%)、「DM(ダイレクトメッセージ)を送る」(40.1%)という結果となりました。

 使われるハッシュタグで最も多いのは「#アーティストやコンテンツの名前」(40.7%)、次いで「#○○好きな人と繫(つな)がりたい」(38.9%)、「#隠し切れないヲタク」(21%)。これらはSNSの投稿の際につけることで、他のヲタを検索できるようになっています。ヲタ活の対象コンテンツによっては、専用のハッシュタグが設定されているケースもあるようです。

様々なヲタ活をしている

SNSで出会いリアルで交流

 ハッシュタグ以外にも、最近は「ファンネーム」「ファンマ(ファンマーク)」など、ヲタの呼称やヲタであることを示す絵文字が決められていることも多く見られます。SNSアカウントの自己紹介欄に載せることで、自分が何ヲタであるかを提示し、他のヲタとのつながりのきっかけを作ることが目的です。 

 ヲタ活で知り合った友達との交流経験としては「SNS上で情報交換をした」(62.9%)が最も多いのですが、「コンサート会場で会った」(59.9%)、「ヲタ活以外でも仲良しの友達としてお出かけ」(44.9%)と続き、リアルの場所での交流がランクインしています。

 実際に渋谷109館内で毎月調査をしていても、「SNSで知り合ったヲタ友」とお買い物に来ているグループも珍しくありません。SNS上で知り合ったヲタ友とリアルな場で交流することに抵抗感が低いことも、今のアラウンド20の特徴です。

 このように、彼女たちが時間もお金も費やしているヲタ活には多種多様な工夫が凝らされており、実態を知れば知るほどアラウンド20のリアルな熱量を感じることができます。それだけではなく、アラウンド20とのコミュニケーション方法のヒントがたくさん隠れているため、今後も見逃せないキーワードとなるでしょう。

●長田麻衣(おさだ・まい)
 シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は、若者に関する講演に講師として登壇すること。そして大人っぽさと透明感を兼ね備えた女性になること。

(繊研新聞本紙19年9月13日付)



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