SHIBUYA109エンタテイメントが新経営方針策定 不動産賃貸主体から「若者ソリューションカンパニー」へ

2021/04/14 14:15 更新


石川社長

 東急グループのSHIBUYA109エンタテイメント(東京、石川あゆみ社長)は21年度(22年3月期)を初年度とする新たな経営方針を策定した。17年4月に新会社として事業を開始して以降進めてきた事業領域拡大策を加速、「従来型の商業施設事業者から、若者ソリューションカンパニーへの転換」(石川社長)を目指す。SHIBUYA109渋谷(渋谷109)で「若者のニーズの変化に対応し、リアルの体験価値を高める」大型改装を開始するとともに、若者に関するマーケティングコンサルタント事業を拡大、商品や売り場のプロデュース事業も本格化する。これにより、全社の営業収益に占める不動産賃貸事業以外の比率を前期の約5%から25年度には約50%に、全社営業利益に占める比率も約30%に高める。

(有井学)  

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 「テナントや外部企業に様々なソリューションを提供することで、若者と企業・社会をつなげる“架け橋”を目指す」という。若者マーケティング機関「SHIBUYA109ラボ」でこれまで実施し、成果を上げてきた他企業へのコンサルタント事業を「総合的なソリューション事業に進化」させる。

 渋谷109内で店舗を運営し、インフルエンサーや企業などと新しい食を共同開発・販売している「イマダ・キッチン」や、音楽などのエンターテインメントコンテンツとの協業商品を期間限定で販売する直営店「ディスプ」などとの連携を強化する。

 今期からソリューション戦略部を新設、それまで別々だった109ラボとイマダ・キッチンの組織を一元化し、体制を整備した。「若者向けに特化した商業施設を運営し、知見も持つ強み」をさらに生かし、食以外の分野での商品や他社商業施設の若者向けゾーンなどのプロデュースなどを本格化する。

 ディスプは新会社設立と同時に事業を開始し、協業先とのネットワーク作りや店舗運営のほか、商品開発のノウハウを積み上げた。現在、渋谷109で2店、大阪のあべのキューズモール内に出店する「SHIBUYA109阿倍野」内で1店運営しており、今期から他社施設への出店も検討する。

 香港の大型複合施設「ハーバーシティ」内にあった店舗を今年1月に撤退、香港事業を東急モールズデベロップメントに移管した。リアル施設の運営は渋谷109、東京・渋谷のマグネット・バイ・SHIBUYA109、阿倍野店、アミュプラザ鹿児島内の店舗に集中する。

 渋谷109は今期から22年度にかけて大型改装を実施する。DtoC(メーカー直販)ブランドなどEC発のブランドや様々な業種の企業との協業による新業態を導入、デジタルプラットフォーマーなどとの協業施策も行うなどして「若者の消費行動に沿い、デジタルを活用したリアルの場を創造」する。24年度に来館者数で過去最高の1000万人を目指す。

 昨年9月にエンタメ商品特化に刷新した自社ECサイトを拡大、SNSを活用した顧客拡大策も促進する。また、若者の関心が高まっているサステイナビリティー(持続可能性)への取り組みも強める。

 石川氏はNTTドコモ、KADOKAWAグループ、東急リテール事業部などを経て、今年4月1日に社長に就任した。ネットやデジタルマーケティング事業の経験が豊富で、「109でも生かしていきたい」という。



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