【繊研教室】ブランドに経営者としていかに関わるべきか

2019/11/11 06:29 更新


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【繊研教室】ブランドに経営者としていかに関わるべきか 顧客との最高の関係を実現しよう

 日々経営におけるブランドの重要性を強く感じている。それこそが、日本企業が競合優位を実現するための重要な打ち手の一つだからである。ブランドに取り組むきっかけは様々であって良いが、事業のターニングポイントでの取り組みは特に影響が大きい。

(並木将仁=インターブランドジャパン代表取締役社長兼CEO)

変局と恒常

 ブランドへの取り組みは、変局点においてと、恒常的に取り組む場合に、大きくは二分される。変局点での取り組みは、きっかけとして周年や社長就任などのタイミングで取り組む「記念行事型」と、経営における転換期の「変革実行型」に細分化できる。恒常的な取り組みはブランドを構築する本質かつ前提であり、全ての会社に与えられた使命と言っても良い。

 しかし、取り組みのきっかけによって、到達地点が変わることが多い。問題は「ギアを変える」意味では同列に見える「記念行事型」と「変革実行型」の意味合いである。オーバーラップすることも多いが、あえて分けて考えると、日本の企業においては「記念行事型」が圧倒的に多い。「変革実行型」を実践できている会社は少数派だろう。

 変革が必要なタイミングで、いかに効率的・効果的に波を起こせるかは企業の成否を左右する。つまり、経営者視点では「変革実行型」のブランドへの取り組みを実現できるかが、経営としてのだいご味とも言えるのではないか。

三つの軸に留意

 ブランドへの取り組みでは、目的・スタイルそしてブランドの位置づけの三つの軸で内容が異なることに留意する。

 取り組むことが決まった場合、次はいかに取り組むかが重要になる。必要なのは「何を目的に取り組むか」「どのようなスタイルで取り組むか」、そして「ブランドと事業の関係はどうするのか」の三つの視点である。

 まずは目的に関して。事業の昇華としてブランド構築が最終目的となる場合=図の①。事業計画実現において今までとは異なるブランドが必要だからこそ、ブランドを再構築する場合=図の②。そして、ブランドを所与として、ブランド資産をブランド体験としてより適切に活用することで事業課題を解決する場合=図の③。この類型を理解する必要がある。

 多くの企業は①は通る道ではあるが、CI(コーポレート・アイデンティティー)/VI(ビジュアル・アイデンティティー)の規定や理念や行動規範の整理で終わる場合も多く、ここで止まるのはもったいない。目に見える形で結果を出すために、②や③をどこまで実践できるかが重要になっていく。

 次に、スタイルに関して考える。古典的には、企業トップが著名クリエイターと組んで、感覚的に決めてしまうやり方として「直感トップダウン型」がある=図のA。このスタイルでは、多くの場合は独りよがりの自己満足で終わってしまう。その逆で、顧客などのステークホルダーに主導権を渡してしまう〝お客様は神様主義〟も日本では実際には多い。この場合は顧客迎合に陥り、レッドオーシャンの中で没個性となり存在意義を失うことも多い=図のB。だからこそ、もっとも求められているのが、顧客と企業、直感と科学、戦略と体験、すべてを有機的に融合させるアプローチである。我々はそれをブランド思考=図のC=と呼んでいる。

 最後にブランドと事業の関係性。つまりブランドにどこまでの役割を期待するのか、の視点である。一般的には、ブランドは事業の後追いという考え方がある。いままでは事業先行で、結果としてブランドが発生するのに任せてきた日本企業は多い=図のI。しかし、事業もブランドもより早いペースで変革が求められる時代においては、ブランドの変革が事業の変革をドライブすることが今後は期待される=図のⅡ。我々は、その成功例を「Iconic Moves」、すなわち「ブランドが示す非連続な成長への道筋と」呼んでいる。

ブランド思考で

 今後は、ブランド優位の会社がブランド思考で事業課題解決においてブランドを構築する時に、Iconic Movesを起こすことが期待される。

 我々が提唱するIconic Movesという考え方は、多くの日本企業の経営者にとっては、コロンブスの卵的な視座の転換になることが多いだろう。だが、〝VUCA(変動性、不確実性、複雑性、あいまい性の頭文字からとった現代の経済環境)〟と言われ、競合優位性が瞬間蒸発し、気がつけば「スモール・ジャイアンツ」(小さくとも偉大な企業)に瞬間的にディスラプト(破壊)される。顧客との関係を軸に経営を考える必然性は、非常に高い。

 ブランドを事業に優先させるという考え方に違和感を覚えるのであれば、顧客との関係を優先して事業を変革するという捉え方もある。

 ブランドとは、突き詰めれば、顧客との関係構築に他ならない。「らしさ」の追求が必要であり、「体験」の構築が必要であり、ブランドは事業結果につながる。企業と顧客の包括的な関係が、すなわちブランドである。

 顧客との新しい関係を定めて、そこから様々な変革を実現していく。変わっていく世界において、経営者が錨(いかり)を下ろすべきは、顧客との関係であるべきだろう。顧客迎合主義でも経営者の独りよがりでもない、顧客との最高の関係がブランドとして実現して、それを目指して経営者がブランドを軸にする世界が来ることを、楽しみにしている。

■なみき・まさひと インターブランドジャパン代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)。戦略コンサルティングファームの経験をベースに、ロジックとクリエイティブの融合から実現するブランド価値の向上で、企業の成長を支援している。

(繊研新聞本紙19年10月8日付)


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