宮城県仙台市の中心市街地で商売を営むファッション小売店は、新型コロナウイルス禍でも健闘している。想定よりも売り上げの回復が早く、高単価なドメスティックブランドを扱う店では、給付金による効果も見られている。東北地方では取り扱いが少ないブランドが好調で、実店舗に限らず、ECでも集客、販売ができている。20年に開業した新たな店も出てきた。
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◆ユタ・ティー・アイ・オー
ネットがけん引
05年創業のユタ・ティー・アイ・オー(田中潤社長)は、青葉区本町でメンズ古着「ユタ」、レディス古着「イオリ」、国内ブランド軸の新品セレクト「ナリワイ」の3店舗を運営する。今期(21年2月期)は前期売上高の1億8000万円を下回る見込みだが、学生を中心とした若者の支持を集め、創業から前期まで増収を続けてきた。

緊急事態宣言や海外に古着の買い付けに行けなかった影響から、5月と8月の一部を休業した。2年間かけて19年並みの売り上げ実績に戻す計画だったが、「9月は営業を再開した効果からか、3店ともに売り上げは前年並み。回復は想定よりも早い」という。
特に好調なのが20代中盤~30代が中心客層のナリワイだ。客単価は約2万円。もともと県外から訪れる客が多い店で、ネット販売がけん引し、全社を支えているという。「ウティ」「シオタ」などはネットで即完売した商品もあった。
「創業から楽をして服が売れたことはないので、コロナ禍だから服が売りづらいという感覚はない。これからも丁寧に商品の魅力を伝えていく」とする。今後、元々店舗があった本町2丁目で現在も借りたままにしている物件を活用し、新たな試みを計画している。
◆エニシングゴーズ
若年層が増加
03年創業のエニシングゴーズ(森義人代表)は、青葉区中央でベーシック調「ステアワイズ」、ストリート調「ステアワイズ・イスト」のメンズセレクト2店と、メンズ・レディスブランド「グラフペーパー」のFC店を運営する。19年2月に開店したグラフペーパーがコロナ禍でも好調で、前期(20年7月期)売上高は1億5000万円(前期比20%増)で着地した。

東北地方でまだ取り扱いがないブランドを積極的に開拓することで、客の支持を得てきた。グラフペーパーも開店した当時は都外初出店だった。6月以降、週末に県外から訪れる客は減っているものの、グラフペーパーの売上高は50%増で推移している。前年の春夏が開業間もなく商品が不足していたこともあるが、給付金効果からか、若年層の来店が目出ち、特に客単価が大きく伸びているという。
客単価2万円超のステアワイズも前年並みの売り上げで推移しており、安定しているという。ステアワイズ・イストは、不振傾向で4月以降休業していた以前の店の屋号を改め、10月にリニューアルオープンした。
今後は客数の減少をネット販売や客単価増で補いたい考え。オンラインで催事を開催するなどしてECを強化する。全体売上高を伸ばすため、新しいFC店の開業なども検討している。
◆ザ・ムード
東口に移転・改装
20年1月に青葉区五橋で開業したメンズ主体のセレクト「ザ・ムード」(麻喜健人代表)は10月中旬、同店を駅東口の宮城野区榴岡3丁目に移転する。当初から東口に店を構えたかったこともあるが、「東口は再開発で人の流れが多くなってきている」ため、移転に踏み切った。移転後は、コーヒースタンドや東北初のピストバイク専門店の導入を検討している。
都内のセレクトショップに勤めた後、20代前半からの夢だった故郷の仙台での開業を実現した。開業間もなくコロナ禍に入った厳しさはあるものの、東京発ブランドの「ボット」が国内でも取り扱いが少ないことから、幅広い世代に支持されているという。

(繊研新聞本紙20年10月14日付)