増加続く国内SC、50施設前後が開業 

2016/09/12 06:31 更新


競合激化で既存売り上げは伸び悩み 閉館SCも相次ぐ

 SCの開業が今年も活発だ。日本ショッピングセンター協会(SC協会)によると、上期(1~6月)の開業数は31施設で、前年同期の28施設を上回った。年間では50施設前後の予定で、昨年の60施設を下回るものの、依然として高水準だ。東京五輪・パラリンピックが開催される20年までに首都圏を中心に大型開発が相次ぐため、このペースは当分続くと見られる。しかし、ここ数年の開業ラッシュで競合はますます激化、既存施設の売り上げは全体として伸び悩む。地方を中心に閉鎖する施設も増えた。SC市場は「新競合時代」に入った。(有井学)

都市部で大型施設

 06年から昨年までの10年間で国内のSC総数は436施設増え、昨年末で計3195施設となった。年間開業数は12年に35施設と鈍化したものの、13年から再び増加に転じ、ハイペースでの開業が続いている。

 昨年まではイオンモールや三井不動産を中心に、郊外・都市近郊の大型SCの開業が相次いだほか、地方の行政主導の再開発プロジェクトを主体に、中規模の地域密着型SCの開発が多かった。

 今年もイオンモールが3月に堺鉄砲町(大阪府)、4月に今治新都市(愛媛県)、5月に出雲(島根県)を開業した。下期は12月に長久手(愛知県)を出す。同じイオングループのイオンタウンも店舗面積3万平方メートル以上の施設を既に2カ所開業、セブン&アイグループは4月に敷地面積約13万平方メートル、店舗面積約6万5000平方メートルの大型施設「セブンパークアリオ柏」を出した。三井不動産は昨年のららぽーと4施設(富士見、海老名、エキスポシティ、立川立飛)と三井アウトレットパーク北陸小矢部に続き、今年10月にららぽーと湘南平塚(神奈川県)を開業する。

 郊外・都市近郊の大型SCの開業が続く一方で、今年は東急不動産の東急プラザ銀座(3月)、ルミネの「ニュウマン」(全面開業4月)、日本郵便が開発し、博多マルイが核店舗のキッテ博多(4月)など大都市中心部での大型施設の開業が一段と増えている。上期は開業した31施設のうち、郊外を含めて首都圏が16施設、大阪、名古屋、福岡を含めた大都市圏が25施設となった。少子高齢化が進む日本でも、就業者を含めて大都市圏での人口増が続いていることが背景だ。

 今後も当面、同様の傾向が続きそうだ。20年の東京五輪・パラリンピック開催を控え、来年以降も首都圏で数多くの大型開発が計画されている。商業激戦区の東京・銀座や渋谷、横浜などの中心部で大型施設が開業する。郊外・都市近郊でもイオンモールやららぽーとが複数の開業を計画する。

増加続く国内SC_06年から15年までのSC開業数と総数の推移

 

 

 

閉館も相次ぐ

 SC協会の推計で、昨年の日本のSC総売上高は31兆1000億円(前年比4・7%増)で、初めて30兆円を突破した。しかし、既存SC売上高は前年並み、今年上期は0・9%減と低迷した。今年の落ち込みは衣料品や都心部、観光地の施設を中心としたインバウンド(訪日外国人)需要の低迷の影響が大きいが、施設数増加による競合激化が背景にあるのは明らかだ。

 グラフの新規開業とSC総数の増加数に差があることからもわかるように、閉鎖するSCも増えている。統合や業態変更を含め、昨年に閉鎖した施設は20を超えた。売り上げ不振を理由に退店するテナントも増加、空いた区画がすぐに埋まらない施設も都市部を含めて目立つ。

 消費者ニーズが変化、多様化する中で、「選ばれる施設」となるためにいかに独自価値を追求し、魅力を高めるかがSCにますます求められる。

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