値入率(原価率)の設定を考える(佐藤正臣)

2017/03/14 00:00 更新


佐藤せんせの算数で極めるMDへの⑮

 大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。

 そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。

■ 前回のレポートはこちら→値入率と粗利率の差が与える影響


☆    ☆    ☆


せんせ。前回は値入率と粗利率の設定。そしてその差は運営のブランドコンセプトにも繋がるので、慎重に行わねばならない。という話はよく理解できましたが、せんせはまだ何か気になるところがあるんですよね。


 あらよく覚えてましたね。実はそうなんです(-ω-;)


 といいますと?


 この講義の主旨とは本来違うことだとは思いますので、今回はあくまで私の個人的見解として聞いてください。


 へい。


 前回までの講義では、値入率と粗利率の設定の差が大きく、店頭に悪影響を及ぼす可能性がある場合。要は予めOFF率の設定が高くなっている場合は、粗利率の設定を上げるべきだと言いましたね。
 

へえ。


 当然、粗利率の設定を高くした方が、目指すべき粗利高も上がりますし、結果的に目指すべき粗利高を達成できたら、多くの社員含む組織内の人たち給料が上がり、幸せを感じることでしょう。
 

私もそうなれば嬉しいです。だからこの講義受けてます(笑)。
 

なんですけど✋10うん年前なら、このことに間違いなかったと思いますし、また資本がある大手企業ならば、出店攻勢をかけて、売上を増やし、仕入れるべき商品数を増やして、スケールメリットが出せるので、このような考え方で良いのだとは思いますが・・・昨今、我々在籍するこのアパレル業界の現状を考えるとどうなんだろうと?


 確かに・・・私の会社も昨年実績クリアできればOKとなるような状況ですし。
 

ここ10数年アパレル業界を取り巻く状況は大きく変わってきています。例えば、商品を作る側からみても、為替・生地値・工場で商品を製作する際の工賃・・・その他もありますが、10数年前と、同じ商品を同じ生地、同じ工場で同じ枚数を製作するにしても、当時の金額と今の金額ではだいぶ違ってきているんですよね~。
 

なるほど。確かに、私の会社でもいつも生産管理の方が、「今の値段だときつい!」って電話で誰かに言ってます(苦笑)


ですよね~(笑)。そして、売り手である小売り側は、簡単には商品は値上げできない。だけれども、原価率も上げれない。むしろ、組織によっては、MD・バイヤーの仕事の目的が粗利益の確保ではなく、(設定した)原価率を死守する、下げることに目的にすり替わっている。


・・・(声が出ない)。


そうなると結果的にどうなるか・・・。


商品のクオリティ自体にも影響が出そうですし、結果的にはお客様が離れてしまって、色んな影響が出そうですね。


そうなんです。だからこそ、今一度現状を見つめ直す。考え直すべき時期に来ているブランド・ショップが多くあると思うんです。
 

では、どのようなことを行ったら良いのでしょ?
 

当初の講義でも行ったように、MDとして目的の一つに「粗利益高の確保」がある。という話をしましたよね。


 へい。


 であるならば、通常、値入率と粗利率の差が大きすぎる場合は、目指すべき粗利率を上げ、より大きい粗利益高を目指すべきというのが、この講義でのアンサーでした。


 そう教わりました。


 しかしながら、目指すべき粗利率が今まで通りで良いのであれば、値入率の設定を下げ(原価率の設定を上げる)ことにより、値入率と粗利率の設定の差を現実的なものにするということも、このご時世、一つの選択肢だと思うんです。


 おっ!!そうきましたか!


 はい。原価率をより低く抑えるというのは、粗利益確保というMDの目的に対する、最も有効的な手段の一つです。しかし、そのことに固執するあまり、商品クオリティが下がったり、作り手側のテンションまで下げてしまうことが、果たして「お客様が喜ぶ商品」を作ることに繋がるでしょうか?


 はぁ~(悩)。色々考えさせられますよね~。


 確かに原価率の引き下げを決断する前に、様々な無駄があるのらば、それを改革するのが先です。例えば、それまでの仕組みや手段を色んな角度から見つめ直すことも必要でしょう。そのことを行ったうえで、改めて値入率(原価率)の設定も見つめ直す。現状、こんな時期に来ていると私は思うんです。


 (なんか今日は熱いな。きょう)


 まあ今回は少し脱線した話になりました。すいませんm(__)m


 いえ。私もなんか現状を鑑(かんが)みて、色んなことを考えるいいきっかけになりました。ありがとうございます。


 では次回は、消化率100%(期間売上原価÷期間仕入原価)で仕入予算を組んで、仮に多くの商品が仕入が出来るとしても、実際商品は余ってしまう。ではその残るであろう商品のことをどう考えたらいいの?っていう話をします。


 楽しみです。次回もよろしくお願いします。



95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp



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