オムニチャネル進捗を読む① もっと客と親密に

2017/12/29 06:00 更新


《連載 オムニチャネル進捗を読む 16年度ECアンケートから①》もっと客と親密に 運営安定化への仕組みが課題

 ファッション企業177社合計の16年度EC販売額の合計は8000億円を超え、前期比約23%増と大幅に伸びた――本紙9月21日付で掲載したように、スマートフォンが普及し、IT(情報技術)ツールの進化とともに販売手法は大きく変化した。SNS(交流サイト)でファンを巻き込み、コーディネートやストーリーを発信、自社アプリや動画配信など「コミュニケーション最適化」が強まり、買い物の決済をより快適にするサイト構築も進んだ。

 客が望む販路で快適に買ってもらう利便性が強まる一方、人員配置、部署横断の連携、在庫調整などの社内調整がEC売り上げを大きく左右し始めた。今後はECを起点に取得したデータを社内共有し、仮説を立て、一人ひとりの要望に応えるオムニチャネル企業へ変革できるかが、成長に跳ね返ってくる。

 16年度EC業績を振り返ると、店舗販売が厳しかったため全社では減収した企業が15年度より増え、全社・EC両方で増収した企業は177社中54社。EC強化が全社増収に直結するとは証明し難くなったが、その中で、ベイクルーズ、アーバンリサーチなど早くからEC社内運用整備・在庫調達や数値管理を強めてきた企業では、高い成長率を保つ。全販路で自社サービスを最大化する指向が強まり、全社売上高に貢献していると見て良い。

大手でEC成長

 全社減収でECが2ケタ増の企業は20社近いが、主にアパレルメーカーが多く、卸の縮小・店舗基盤の脆弱(ぜいじゃく)さを巻き返す大きなチャンスともなっている。

 16年度本紙調査を基に、ここ3年でECを伸ばした企業群を明らかにした。


 EC売り上げ規模で切って、伸び率を割り出してみたところ、15年度ECを大きく伸ばしたのは、EC年間売り上げ12億円未満が多く、16年度は100億円超企業へ移った。ECが新興事業でなくなり、かつ「大を小が食う」構図は薄れはした。

 しかし、15年度ほど各売り上げ水準ごとに伸びの差がなくなり、各社の工夫・組織力次第で、どの売り上げ水準でもECの伸びを高められると見ていい。サイトの商品情報の充実、在庫コントロール、生産や企画部署との連携、販促・集客施策に加え、顧客・個客と心地よいコミュニケーションを丁寧に行うことが重要になった。

 一方、12億円未満企業では全社・EC成長で課題が膨らんでいる。社内の人材不足や、EC運営が特定の〝人任せ〟になり、消費者との最適なコミュニケーションやサイト運営が不安定な一面が出ている可能性がある。社内全体でECと生産・企画体制をつなぎ、運用を回せるように仕組み化するとともに、ITツールへの柔軟な対応が求められる。システム開発ベンダーの協力も欠かせない。

購買高める知恵

 全社売上高順からECを見てわかった特徴は、①売上高1000億円超企業は軒並みEC2ケタ増収②売上高50億以上もEC安定成長。その一方で、③売上高50億円以下でEC減収が目立つ点も挙げられる。15年度はEC全体が好調で、③の傾向は出ていなかった。要因はEC競合にある。「商品情報をECモールや自社サイトに上げただけでは、消費者の購買につながらなくなった」という声をよく聞く。クーポンなど様々な販促サービスが行われる中で、客と良好なコミュニケーションを維持・継続することは大きなテーマとなった。

 基本的動作として、ECの売り上げ構成要素の「訪問客数」「購買率」「購買単価」を上げるマーケティング活動が重要になる。来訪客数は広告投資で大きく変わるが、購買率こそ「良好なコミュニケーション」で、客との距離を縮める工夫が大事。加えて「日・週・月単位データを読み、計画的な商品提案と販促計画の立案」「社内コミュニケーション量アップ」が求められる。

 ECサイトを空き時間にスマホで見る傾向も強まり、サイトや商品の新鮮度が求められている。EC強化の第1フェーズである組織整備・商品情報充実・サイトの使い勝手向上は、企業規模に関係なく、日々整備することが不可欠になった。




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