日本のアパレル業界で、NPS(ネット・プロモーター・スコア)の導入が広がってきた。
デジタル化が進み、顧客視点が重視されるなか、顧客のロイヤルティーを高めることが経営にとっても大きな課題となっている。
■影響を無視できない
NPSとは顧客のロイヤルティーを測る指標で、00年代半ばに米国で生まれ、米アップルなどが導入したことで世界に広がった。00年代に世界的なトレンドとなったデータ重視経営から、10年代に入って顧客体験を重視するCXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)が主流となりつつあることも、NPSの普及を後押しする。SNS(交流サイト)が台頭し、口コミが瞬時に拡散される時代となり、顧客の感情や体験が経営に与える影響を無視できなくなった。
NPSはアンケート形式で、接客に関する質問など複数の設問に対して顧客にスコアを付けてもらい、そのデータを分析して経営に生かす。NPSが高まるほど事業成長率も高まるとされている。
日本にも数社、サービスを提供する会社があり、エモーションテック(東京、今西良光代表取締役CEO=最高経営責任者)もその一つ。15年ごろから問い合わせが増え、昨年からじわじわとアパレル企業への提供が増えているという。
同社は、13年3月に創業。NPSをはじめとする感情データを基に、顧客体験の分析・改善・マネジメント支援を行うクラウドサービス「エモーションテック」を提供する。顧客や従業員の考え・感情をデータ化することで可視化し、クラウドを利用してそのデータをリアルタイムで分析、経営に生かすことができる。
同サービスでは、QRコードやメールを活用して顧客にアンケートを実施。各設問に対してスコアを付けてもらうとともに、そのスコアを付けた理由を聞く。どの項目がNPSのスコアに大きく影響するのか、スコアが低い顧客は何に不満を持っているのか、などスコアごとに傾向を分析することができ、「定量化することで、見えなかったことが見えてくる」(同社)と言う。さまざまな顧客接点があるなかで、「全ての施策を一度にやると疲弊してしまう。本当にロイヤルティーに効くポイントを見つけて強化することが大切」と話す。
■経営を変えていく必要
今までは店頭が中心だったが、ECなど顧客が多様化するなかで、「全チャネルを踏まえた上で、お客様がどういう体験を求めているのかを捉えないと、本当の顧客像が見えづらくなっている」。デジタル化が進み、「企業と顧客の接点が飛躍的に増えた。テクノロジーが世の中を変え続けているのにしたがって、経営のやり方も変えていく必要がある」とNPSの必要性を説く。
同社がNPSと並行して、普及に力を入れているのが、従業員を対象とするeNPSだ。eNPSを高めることで、スタッフのパフォーマンスを上げ、離職率を下げることができる。特にアパレル業界は販売員の離職が経営に与える影響が大きいため、「働きやすく、かつ働きがいのある環境を整えることは重要」と話す。
アパレル企業の特徴は、現場のチームの雰囲気や店長との関係がロイヤルティーに大きく影響すること。勤続年数によってもロイヤルティーに効くポイントが違い、例えば会社のビジョンは新人ではそれほど気にしないが、3年以上になると重視する傾向があるという。