日本洋装協会(伊賀玲子会長)は、オーダーメイドと既製服の良さを融合し、新たに日本人に向けた標準パターンを開発した。既製服で協業したのは、「現代の名工」で文化ファッション大学院大学名誉教授の稲荷田征氏と大手アパレル出身でトライベッカ代表の関充氏。ミシン糸のアズマ(東京)が監修した。
今回の取り組みは、オーダーメイドの体にフィットした設計と既製服のシルエットやフォルムなどの美しさを両立させた設計理論に基づいたパターン開発。原型は婦人向けジャケットで3体(①テーラード②プリンセスライン③パネルライン)を作成した。通常、アパレルは量産型で均一な商品を効率的に生産する。トレンドなどを加味し毎シーズン進化させるのが特徴。ブランドごとにパターンを作成し、不特定多数を対象に美しいシルエットを提供する。一方、注文服は手作業を多用した仕立てで個人の着心地の良さを追求する一点物のため、効率が悪く、今の時代に合ったファッション性を後回しにされることもあった。これまで交流が少なかった注文服と既製服が協力し合うことで、こうした互いの悩みを解決することにもつながる。
完成した標準パターンは、アズマが出展した東北ミシンショーで縫製工場などアパレル業界へ紹介した。また、同社のコワーキングスペース「ツクロウ」でも一般販売する。洋装協会でも活用する予定。「学校教育でも利用してもらい、服作りの魅力を次世代に伝えたい」としている。
日本洋装協会は、1947年に日本最初の洋装技術者が集まり同協会を設立。2011年に一般社団法人となった全国規模の組織。会員は約200人。技能と婦人服装文化の発展に寄与し、高い技能を持つ洋装技術・技能者の育成を目的とした、洋装業界で長い歴史をもつ団体。会員によるコンクールを定期的に開催している。